みちづれの猫…唯川恵著

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みちづれの猫

『みちづれの猫』

著者
唯川 恵 [著]
出版社
集英社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784087716856
発売日
2019/11/05
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

みちづれの猫…唯川恵著

[レビュアー] 南沢奈央(女優)

 5人家族で賑(にぎ)やかだった実家は、ついに昨年、両親ふたりだけとなった。特に母は、寂しくなった、と気を落としていたので、私は心配して実家によく帰った。それが今、父も母も「毎日飽きることがない!」と楽しそう。うちに2匹の猫が来たからだ。

 ただいてくれるだけで、生活が変わり、気持ちが変わり、人生が変わる。飼っている猫、どこからか現れて棲(す)み着いた猫、神社の猫神様、元恋人の猫、猫のぬいぐるみ――人生の様々な場面で出会う猫の存在に救われる。そんな女性たちを描いた7編の短編集だ。

 「陽だまりの中」に、全編に通ずる印象的な一文がある。突然の息子の死に呆然(ぼうぜん)としている主人公の元に、いつも通りに朝夕に餌をもらいに来る番(つが)いの野良猫。その時、はっと気づくのだ。「今、自分を生かしてくれているのは、もしかしたらこの猫たちなのかもしれない」。猫に触れた後のように、優しい匂いと、温かく柔らかい余韻が残る。

 余韻と感謝を持って、実家の猫たちに会いに行った。私の情緒なぞつゆ知らず、コタツで丸くなっている姿は、これまた愛(いと)おしい。(集英社、1500円)

読売新聞
2020年1月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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