起業の理由は「人のために夢中になれた」から。印度カリー子さんの仕事観

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起業の理由は「人のために夢中になれた」から。印度カリー子さんの仕事観

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「働き方改革」に「副業元年」、 仕事を取り巻く環境は、驚くほど変化を遂げ、 働き方も職種もダイバーシティの時代へ。 もはや、仕事=その人の生き方といってもいいかもしれません。

なかでも女性は、結婚、出産、育児と ライフステージが否応なく変わることもあり、 しなやかに、粘り強く、時にパワフルに、 自分らしい働き方にたどり着いた方が多いように思います。 (「PROLOGUE」より)

これが私の生きる道! 彼女がたどり着いた、愛すべき仕事たち』(世界文化社)の冒頭にはこう書かれています。

それぞれの手段で生き抜く33人の女性たちへのインタビュー本

どのような道筋を経て現在に至ったのか、やりたいことを実現するにはどうしたらいいのか、あるいは、これからなにかを始めたい人に向けたメッセージなどが明らかにされています

きょうはそのなかから、現役の大学院生であると同時にスパイス料理研究家、スパイス専門店「香林館」代表取締役でもある、印度カリー子さんをクローズアップしてみたいと思います。

「スパイスカレーをお家でも手軽に」をモットーに、スパイスセットの開発や販売、レシピ本の出版、メディア出演などを通じ、スパイスカレーの普及活動を行っている人物。

大学院では、食品化学の観点から香辛料を研究しているそうです。

スパイスにハマッたきっかけは?

大学1年生のとき、インドカレーが好きなお姉さんのためにインドカレーをつくったことがすべての始まりだったそう。

スパイスカレーは手間がかかりそうにも思えますが、3種類を組み合わせて炒めるだけでOK。味は本格的なのに、とても簡単だということに驚いたのだといいます。

それからカレーにのめり込みます。自己流のレシピをメモする感覚で、インドカリー子という名で、ブログを始めました。

2カ月くらい続けた頃、「なぜこんなにおいしいインドカレーが広まってないんだろう」と考えたとき、日本にはスパイスを簡単に買える環境がない、ということに気がついて、「もっと世間にスパイスの魅力を知ってほしい」と思い、初心者でも手軽に使えるスパイスセットを作ろう、と。(43ページより)

具体的にどうやって仕事に?

ターゲットにしたのはカレーマニアではなく、30~40代の主婦層。忙しい毎日を送りながら献立を考えている子育て世代の方にこそ、“簡単、おいしい、アレンジ自在”なスパイスカレーが必要だと思ったのだそうです。

そこでSNSを通じて主婦の方々とつながり、意識的に交流を持つようにしたのだとか。

貯金の10万円を資本金にし、オリジナルスパイスセット3種類を各100セットずつつくったのは大学3年生の春。

売れるのだろうかと不安はあったものの、ネットショップで販売したところ初日に10セット売れ、1カ月で完売。その後もSNSで拡散され、問い合わせが殺到することに。

ポイントは、質のいいものならなんでも売れるわけではなく、「主婦層」をターゲットに、親しみやすいパッケージや価格設定にしたこと。

本気でビジネスにするには、「誰に届けたいか、誰の役に立つのか」まで考えること、つまりマーケティングが大切です。(44ページより)

理想の仕事(働き方)とは?

この問いに対する答えは、「ストレスレスであること」。

“好き”を仕事にしているにもかかわらず、仕事が増えてプライベートや睡眠時間も確保できなくなり、心身ともに疲弊したことがあったというのです。

そこで「18時以降は、極力仕事をしない」とルールをつくり、時間がきたら翌日に仕事を持ち越して帰宅し、夕食のスパイスカレーをつくるのだといいます。

心がけているのは、ルーティンのなかで、頭と体をスイッチできるような働き方をすること。(46ページ)

これからなにかを始めたい人へ

印度カリー子さんは、もともと将来の夢もなく、つまらない人間だったと過去を振り返っています。

そんななかでの分岐点は、自分のためにつくる料理にはハマらなかったのに、お姉さんのためにつくるカレーには夢中になれたこと

誰かのために夢中になれることなら、人は爆発的に行動できると思っています。(46ページより)

そして重要なのは、いざ始めるとき、人に頼りすぎないこと

頼ることが悪いわけではないものの、好きなことを仕事にしたいのであれば、まず自分でやってみることが大切だという考え方です。

スパイスの個放送もウェブサイト制作も手探りでやってみて、ときには挫折することで、多くのことを実体験として学ぶことができるわけです。

何かを始めたいという方でも、最初からすべてを人に頼んで、外側だけを繕いがちに。自分でやってみて、物事の本質を知る。

自分で事業をする上で、とても重要なことだと考えています。(46ページより)

彼女たちのワーク・ストーリーを参考に、 「こんな働き方があったのか!」 「あんなことも仕事になるのか!」 といった発見から、 自分らしい働き方のヒントを見つけたり、 悩んだり落ち込んだときの先輩からのエールとして活用したり……。

新しい時代を生き抜く女性たちの 心に寄り添う1冊になれたら幸いです。 (「PROLOGUE」より)

冒頭でご紹介した「PRPLOGUE」はこう結ばれていますが、本書は必ずしも女性だけのためのものではないようにも思えます。

女性はもちろん、働くすべての人々を勇気づけるだけの説得力があるということ。

したがって、性別に関係なくより多くの方に手にとっていただきたい一冊だと感じました。

Photo: 印南敦史

Source: 世界文化社

メディアジーン lifehacker
2020年2月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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