『免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ』
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新型肺炎流行の今こそ“知識のワクチン”を
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
新型肺炎が世界を恐怖に陥れている。それに伴って免疫力強化を謳う食品やサプリなどが、売り上げを伸ばしているようだ。
だが「免疫力を高める」と称する商品は、残念ながらまがい物が多い。免疫は体内で働く様々な防衛システムの総称であり、「免疫力」とひとくくりには語れないし、数値化して単純に強弱を計れるものでもない。また、免疫力は強いほどいいわけではなく、免疫の過剰な働きで起こる病気は数多くある。免疫力アップを掲げる本も書店の棚を埋めているが、科学的根拠の怪しいサプリや食品を売りつけるためのバイブル商法であることがほとんどだ。
そうした中で宮坂昌之『免疫力を強くする』というタイトルの本が、ブルーバックスから刊行された。科学書籍の老舗ともあろうものが大丈夫かと心配しつつ手にとったが、筆者の杞憂であった。先述の「免疫力アップ」をめぐる懸念についても、全てまえがきで記されている。広い層に手にとってもらうため、あえてこのタイトルを選んだのだろう。
免疫学の基礎からワクチンの重要性、最新のがん免疫療法に至るまで詳しくわかりやすく解説されており、現状この分野を知る最良の一冊といってよいだろう。各種疾患に対するワクチンの効果と注意点についても網羅されており、心配に思っている方に一読をおすすめしたい。本書が体のワクチンに劣らず重要な、知識のワクチンになってくれるだろう。