こどもホスピス 限りある小さな命が輝く場所 田川尚登著 新泉社

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こどもホスピス

『こどもホスピス』

著者
田川 尚登 [著]
出版社
新泉社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784787719218
発売日
2019/12/03
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

こどもホスピス 限りある小さな命が輝く場所 田川尚登著 新泉社

[レビュアー] 通崎睦美(木琴奏者)

 本書は、日本ではまだ数少ない「こどもホスピス」の意義を知ってもらいたい、という強い思いを持って書かれた。書名からは、余命宣告を受けた子どもが最期の時を過ごす緩和ケア病棟を思い浮かべがちだが、そうではない。こどもホスピスとは、早期の死を免れることができない病児とその家族が、心穏やかに、楽しく過ごせる場所。病院ではなく、治療や緩和ケアに精通した看護師や保育士が常駐、家族一緒に利用できる児童館といったイメージが近い。亡くなる瞬間まで成長し続ける子どもの生命力、家族の思いをしっかりと受け止める豊かな場だ。

 著者は、22年前に当時6歳の愛娘(まなむすめ)・はるかちゃんをなくす。有効な治療法のない脳腫瘍と診断、余命半年を宣告されて5か月後のことだった。5年後、自身の経験を元に、病児とその家族を支えるNPO法人を立ち上げる。

 子どもが重病を患えば、治療自体に目が行きがちだ。大きな不安や経済的負担を抱える親、行き場をなくしがちなきょうだいへの支援は二の次となる。現在の日本社会において病児とその家族は、医療や介護、福祉、教育制度の狭間(はざま)にあり、充分な支援を受けているとは言い難い。

 著者は、院内コンサートの提供や病児きょうだいの預かり保育から始め、地元神奈川県の小児がん拠点病院近くに、子どもの入院中、家族が低料金で利用できる宿泊施設を誕生させた。

 活動の原動力は「娘にしてあげたかったこと」。篤志家からの思いがけない遺贈を機に、いよいよ「こどもホスピス」の設立を目指し活動を始める。著者が視察したこどもホスピス先進国、イギリス、ドイツ、オランダの施設事情は大変興味深い。

 著者が設立を目指す施設は、無事に完成した後も、運営費用は寄付によって支えられるという。こんな施設が当たり前に成り立つような国になればと願うと同時に、私も支援の輪に加わりたいと思わずにはいられなかった。

読売新聞
2020年2月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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