DVDと本を通じて知る。「マインドフルネス」の価値と効果、理論と実践
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
マインドフルネス関連書籍は、これまでにも複数回ご紹介してきました。
しかし現実問題として、「マインドフルネスってなんなのか、正直なところよくわからない」という方もいらっしゃることでしょう。
しかもそれは、なかなか人に聞きづらいことでもあります。
そこでご紹介したいのが、マインドフルネスの入門編というべき『実践! マインドフルネスDVD』(熊野宏昭 著、サンガ)です。
著者は、マインドフルネスを心療内科治療に導入している第一人者。
ここではDVDとブックレットによって、マインドフルネスの価値や効果、理論と実践をわかりやすく解説しているのです。
世界が課してくるチャレンジに対して、回避的にならず主体的に取り組んでいくために、われわれ一人ひとりに何ができるのか、それを自分にもっとも近い場所から考えていこうというのがこのDVDブックの趣旨になります。
つまり、ストレスに負けずに、自分の夢を実現させていくためにどうすればよいかを、「自分の体験との特定の関わり方」を意味するマインドフルネスという心の使い方を軸に解説し、その実践の仕方を含めてお伝えしていきたいと思っています。(「はじめに」より)
そもそも、マインドフルネスとはなんなのでしょうか?
きょうは改めて、そんな“基本”を確認してみたいと思います。
マインドフルネスとはなにか?
マインドフルネスとは
■今の瞬間の「現実」に常に気づきを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情には囚われないでいる心の持ち方、存在の有様。(26ページより)
私たちは、常に現実を見て、感じているように思っています。しかし実際のところ、気持ちというものはすぐに脇にそれてしまうもの。
頭のなかの世界へと気持ちが向いてしまい、現実がお留守になってしまうということです。
でも頭のなかの世界での考えや、湧いてくるいろいろな感情に囚われてしまうと、現実が見えなくなってしまうことになります。
それに対して、マインドフルネスとは…。
CHECK!
☑︎現実をきちんと感じ取っている状態、心の持ち方のことをマインドフルネスという。
☑︎マインドフルネスの練習を続けていくと、だんだん生き方自体(存在)がそのような有様になっていく。
☑︎「現実をきちんと感じ取る心の持ち方」をし、「そういう生き方が身についてくること」まで含めての「マインドフルネス」である。
(27ページより)
心ここにあらずの状態から、瞬間瞬間の自分に戻る
いっぽう、「心ここにあらずの状態」から「ハッと我に返る」ことをマインドフルネスというのです。
たとえば、友だちに大事な相談をするために話し始めたとしましょう。
ところがその友だちが、3分もしないうちに窓の外を眺め出したり、スマホを取り出してなにかをチェックし始めたとしたらどうでしょう?
文句のひとつも言いたくなるのではないでしょうか。
そこで、「おい!」と声をかけたとすると、その友だちは「悪い悪い、ちゃんと聞いてるよ」というように“いまここ”へと戻ってきます。
そして、戻ってきさえすれば、頼りになってくれることでしょう。
端的にいえば、この戻ってきた状態、ハッと我に返った状態のことをマインドフルネスと呼ぶのです。
もちろんそれは、友だちとの関係だけに限ったことではありません。私たちは日常のさまざまな場面で、同じようなことをしているわけです。
たとえば仕事を始めたとしても、5分も経たないうちにネットのニュースを見始めたり、「あのメールに返事を書かなきゃいけないんだった」と思い出して返事を書き始めたり。
そして、「あれ、なにをやってたんだっけ?」と気づき、目の前の仕事にまた戻るというようなことをしてしまうものだということ。
CHECK!
☑︎自分がやりたいことをやり、やらなくてはいけないことをし、今を生きるためには、目が覚めていることが大切。
☑︎「心ここにあらずの状態」になってしまうと、うまくいかない(いろんなストレスを抱え込んでしまうことになる)。
☑︎頭の中でいろんなことを考えてしまうと、妄想の世界に連れていかれてしまう。
☑︎頭の中の世界は現実ではなく、いくらでも大袈裟に考えることができるので、どんどん不安や落ち込みを増す方向に考えてしまいがち。 (29~30ページより)
私たちは不安になりたくありませんし、落ち込みたくもないので、たとえば目の前の人が自分にとって嫌な話を始めたりすると、無意識のうちに耳を閉ざしてしまいがちです。
すると結果的に「心ここにあらずの状態」になってしまうため、本当ならちゃんと聞いておかなくてはいけないことがわからなくなってしまいます。
そういう状態ではなく、いまここにちゃんと自分がいて、いまの時間を生きている、その状態がマインドフルネスだということ。
ただしマインドフルネスは、「ストレスがない状態」だということではありません。マインドフルネスとは、いまの自分がどういう状態かをありのままに感じること。
つまり、ストレスがたまっているなら「たまっている」と感じる、ストレスがないなら「ストレスがない」と感じるということ。(27ページより)
著者によれば、DVDに収録されている動画と一緒にブックレットを確認すれば、マインドフルネスへの理解がより深まるそうです。
ただしブックレットには講義や実践のポイントがまとめられているため、動画を見られないときは、ブックレットを読むだけでもひととおりの流れを学ぶことができるのだとか。
つまり実践的であり、利用価値がとても高いということ。
だからこそ現代人、とくに若い世代を対象にしているということにも納得できます。
Photo: 印南敦史
Source: サンガ