『CREATE WORK』
- 著者
- ピョートル・フェリクス・グジバチ [著]
- 出版社
- SBクリエイティブ
- ジャンル
- 社会科学/経営
- ISBN
- 9784815600686
- 発売日
- 2020/01/23
- 価格
- 1,540円(税込)
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会社・組織をハックする。「副業」時代に必要なビジネススキル
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
いまや転職・独立・副業が当たり前の時代です。
だとすればビジネスパーソンにとって重要なのは、「会社」ではなく「自分」主体で仕事をし、キャリアを積んでいくことであるはず。
そこで、望む方向に進んでいくための考え方と仕事術を紹介しているのが、『CREATE WORK 自分だけのキャリアをつくれる人が入社1年目から大切にしていること』(ピョートル・フェリクス・グジバチ 著、SBクリエイティブ)。
ご存知のとおり、著者は元グーグル人事部長という肩書を持つ人物です。
本書では、従来の仕事やキャリアのあり方が通じなくなった時代において、特に若いうちに、どんなことをしておけばいいのか、をまとめることにしました。もちろん、ベテラン社員にとっても、今起こっている変化と、今後のあり方について、気づくことが多い内容になっていると思います。(3ページより)
そんな本書のなかから、きょうは第2章「会社・組織をハックする」に注目してみましょう。すべきこととそうでないことを、○×形式で示し、その根拠を解説したパートです。
ルールを整理しよう
×言われたルールだけを学ぶ
○言われていないルールを見つける
働きやすさをつくるヒントは、そのグループのなかで
どんなルールがあるのか?
そのルールは正しいのか?
そのルールには意味があるのか?
を自分のなかで整理すること。
グループやコミュニティのなかには独自のルールがあるもので、それは特定の組織内に存在する「常識」と言い換えることも可能。
つまり組織で働くビジネスパーソンは、常識を逸脱しないように配慮したうえで、自分のパフォーマンスを最大限発揮できるように仮説を立て、実験を繰り返しながら動いているわけです。
そして組織には「暗黙のルール」が存在するだけに、自分の働きやすさだけを追い求めてしまうと、組織での居場所を失ってしまうことにもなります。
暗黙のルールを見破れるかどうかで、仕事のしやすさや、居心地のよさが変わってくるということ。
・誰が一番パワーを持っているのか
・誰に何を言ったら予算が下りてくるのか
・誰に説明すれば許可が下りるのか
・稟議書はどう書いたら通るのか
・有給休暇はどんなフォローをするとスムーズにとれるのか
たとえばこのような、その組織だけに通じるルールがあるもの。
日本人は本音で話さない「建前の民族」だと言われていますが、だからこそ大切なのは、暗黙のルールの存在を認識し、どのように働きかければ価値を発揮できるのかについて考えること。
そうすれば、格段に過ごしやすくなるのです。(102ページより)
相手の価値観を知ろう
×気が合わない人は、「困った人」と切り捨てる
○その人のバックグラウンドを知る
有給休暇の制度があるのに、いざ休みを取ろうとすると嫌味を言ってくる先輩がいる。
参加自由の飲み会なのに、参加を強要されているような雰囲気があり、重たい気持ちになる。
そんな状況を体験したことがある人は、決して少なくないはず。
世代間のギャップが大きければなおさら、「困った先輩」「意味のわからない上司」だと感じてしまいがちでもあります。
しかし、「困った人」と片づける前に、その人の価値観を知り、前向きにつきあい方を考えたほうが建設的だと著者は記しています。
たとえば、ある年代の人のなかには「我慢すること=仕事」「プライベートと仕事なら仕事を優先すべき」という認識があるかもしれません。
そんなときは、「そういう人は時代から取り残されている」と考えるのではなく、「そういう背景を持っている人」としてつきあったほうが学びは多いということ。
なぜなら、その人にはそう判断する根拠があるはずだから。
「休まない」先輩は、休まずきちんと仕事を仕上げることで、外のお客さんから信頼を得ているのかもしれません。
飲み会にいつも参加する上司は、お酒の席を利用して深い人間関係を築いているのかもしれません。
そして保守的な上司は、以前、左遷された人を見てきたり、自分の家庭やローンのことを考えているのかもしれません。
つまり、そうした背景を知ったうえで相手を理解し、仲よくなって、仕事の仕上げ方や人間関係を構築するコツなどを教えてもらったほうが、自分にとっても得なのです。(106ページより)
Manage Your Manager
×飲み会で上司の愚痴を言って終わる
○上司をうまく動かす
海外ではよく「Manage Your Manager」ということばが使われるそうです。
言うまでもなく、マネージャー(管理職)をマネジメントするという意味。
仕事をするうえでは、管理職の役割を果たしていない上司と働かなくてはならないこともあるでしょう。
でも上司が障害になって仕事が進まないと、社内での評価に影響したり、その会社で働くこと自体が嫌になってしまう可能性もあります。
しかし、そんなときは愚痴をこぼすのではなく、自分がその上司をマネジメントする意識を持つべき。
管理職の役割を果たしていない上司に対しては、管理職の役割を担うよう、こちらから働きかけようと著者は提案しています。
たとえば上司が打ち合わせの準備をしてこない人なら、「次のアジェンダは私がつくっておきますね。もしプラスアルファがあれば、打ち合わせの前に追加しておいてください」と先回りして動くようにすればいいのです。
こうしたことを繰り返せば、上司も自分の行動を改めるようになるものだといいます。
そして、こうした働きかけを心がけていると、いつしか「仕事ができる人」と認知され、働く環境がよくなっていくもの。
周囲からの見え方が変わり、社内評価も高くなっていくわけです。(121ページより)
著者は日本のさまざまな組織での働き方を見てきた結果、日本と海外では、キャリアや若い時期にすべき仕事に対する考え方が大きく異なると感じたそうです。
このままでは、日本は世界から大きく取り残されてしまうかもしれないとも。
そこで本書を通じ、会社にいながら、自分自身でキャリアを磨いていくための考え方や手法を学んでおきたいところです。
Photo: 印南敦史
Source: SBクリエイティブ