シークレット・ウォーズ 上・下 スティーブ・コール著 白水社

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シークレット・ウォーズ(上)

『シークレット・ウォーズ(上)』

著者
スティーブ・コール [著]/笠井 亮平 [訳]
出版社
白水社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784560097250
発売日
2019/11/26
価格
4,180円(税込)

書籍情報:openBD

シークレット・ウォーズ(下)

『シークレット・ウォーズ(下)』

著者
スティーブ・コール [著]/笠井 亮平 [訳]
出版社
白水社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784560097359
発売日
2019/11/26
価格
4,180円(税込)

書籍情報:openBD

シークレット・ウォーズ 上・下 スティーブ・コール著 白水社

[レビュアー] 篠田英朗(国際政治学者・東京外国語大教授)

 気鋭のジャーナリストが、アメリカのアフガニスタンにおける戦争の約15年間を追った。驚かされるのは、その描写の具体性だ。壮大な長編小説を読んでいるような気分になる。

 想像で、登場人物の心理描写を子細に行ったりすることはない。しかし代わりに、アメリカ、アフガニスタン、パキスタン政府高官の発言が、極めて具体的に再現されている。そのため、上・下巻をあわせて、千ページ近い字数の大著であっても、スピード感を持って読み進めることができる。様々な人物、様々な事件が、明晰(めいせき)な描写で、次々と立ち現れてくる。膨大な数の人々に対する入念な聞き取り調査の結果である。資料としても第一級の価値を持つ書だろう。

 アフガン戦争の特徴は、諜報(ちょうほう)活動においてのみならず、無人機による攻撃などで、CIA(米中央情報局)が大きな役割を担ってきたことだ。軍事機構とは別に行動するため、その動きは、ニュースですぐに取り上げられることはなく、本書のような地道な解明努力がなければ明らかになってこない。

 本書は、無人機による攻撃の方法などをめぐって、CIAの中でも職員同士の対立があったことも紹介する。無人機による攻撃の後、駐パキスタン大使がCIA支局長と口論する場面なども、臨場感あふれるやり取りだ。

 さらに本書が特筆するのは、パキスタンのISI(三軍統合情報局)の役割である。2001年9・11テロ事件の後にアフガン攻撃を決めたブッシュ政権は、表面的には協力姿勢を示すパキスタンを懐柔する態度をとった。だが結局は、タリバン勢力は、パキスタンへと逃れて、力を温存し、今日の勢力挽回へとつなげた。

 「アメリカ史上最長の戦争」をめぐっては、アメリカ政府のボタンのかけ違いも、何度か起こった。今日のアフガニスタン情勢は、いっそう混迷を極めるが、その経緯を知るための本でもある。笠井亮平訳。

 <注>原題は「Directorate S」です。

読売新聞
2020年2月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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