戦場の秘密図書館 マイク・トムソン著

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戦場の秘密図書館〜シリアに残された希望

『戦場の秘密図書館〜シリアに残された希望』

著者
マイク・トムソン [著]/小国綾子 [編集、訳]
出版社
文溪堂
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784799902516
発売日
2019/12/11
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

戦場の秘密図書館 マイク・トムソン著

[レビュアー] 飯間浩明(国語辞典編纂者)

 小学生から読める内容。ルビも多用されています。

 内戦下のシリアで、政府軍に囲まれながらも、自由を求めて戦うダラヤの街の人々。食糧や電気、水道も絶たれた中、知識に飢えた若者たちは、廃墟(はいきょ)から運び出した本を地下室に集めて、秘密の図書館を作ります。政府軍に知られたら、爆撃を受けてしまう。まさしく命がけで、集めた本を管理し、読みふけり、議論を交わし合います。

 BBCの海外特派員である原著者は、ラジオのドキュメンタリー番組を制作するため、ネットを通じて現地の若者たちから証言を得ます。その証言内容が物語の中心です。訳者はそれを「編訳」の形で若い人たちにも読みやすい文章にしています。

 シリアで何が起こっているか、新聞の斜め読みでしか知ることのなかった評者にとって、現地の過酷な状況は衝撃的です。戦火にさらされながら、若者たちが読書に対して抱く焼けつくような思い。一方、戦火のない国に住む自分は、パンの恩恵を軽視するのと同様、書物の恩恵も軽視しているのではないか。痛切に反省させられます。小国綾子編訳。(文渓堂、1500円)

読売新聞
2020年2月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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