評価ではなく肯定。自己肯定感に欠かせない「信頼できる他人」の存在

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NOを言える人になる

『NOを言える人になる』

著者
鈴木裕介 [著]
出版社
アスコム
ISBN
9784776210504
発売日
2020/01/25
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

評価ではなく肯定。自己肯定感に欠かせない「信頼できる他人」の存在

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

NOを言える人になる 他人のルールに縛られず、自分のルールで生きる方法』(鈴木裕介 著、アスコム)の著者は、内科医・心療内科医であると同時に、医療職のメンタルヘルス支援活動など「生きづらさ」を抱える人たちの話を聞いてきたという人物。

その結果、ふだん普通に生活しているように見えても、心の多くに生きづらさを抱えながら、それを隠してギリギリで生きている人が相当数いるのだろうと実感しているのだとか。

たとえば、大切な人と死別し、悲しみでやりきれなくなってしまったとしても、「この喪失の経験から得たものを、誰か他の人の役に立てよう」と思うことができれば、人は、また前に進むことができます。

起こった出来事に対して、主観的に自分が納得できるような意味づけをしていくことで、挫折から前向きに立ち直ったり、成功体験を自信に変えることができるわけです。(「はじめに」より)

そして自分の物語に納得することは、自己を肯定することと同義だといいます。

ありのままの自分の人生を「これでいい」と肯定できれば、自分の価値観やルールを軸として生きていけるということ。

だからこそ、自分の物語をつくることはとても重要。そして、自分の感情に素直になるべき。

感じたままの感情だけが、自分に起き他出来事に納得するための解釈をもたらしてくれるということです。

そうした考え方に基づく本書のなかから、きょうはcontents④「NOを言う勇気と自己肯定感<編>」に注目してみたいと思います。

自己肯定感と自己評価の違い

著者によれば、自己肯定感とは「なにはなくとも、自分は自分であって大丈夫」という感覚のこと。

たとえ欠損や欠点だらけでも、誇れるものがなくても、そんな自分自身を丸ごと受け入れ、愛することができる。 それが自己肯定感だ。(197ページより)

とはいえ自己肯定感を持てずにいる人が、この感覚をきちんと理解することは難しいはず。

特に自己肯定感は自己評価と混同されがちで、「自己肯定感を持つこと」=「自己評価が上がること」と思っている人は少なくないのだといいます。

ちなみに自己評価とは、自分の能力、仕事の成果や努力、容姿などに対し、外部から取り込んだ一定の価値基準(物差し)をもとに、自分自身が下す評価(ジャッジ)のこと。

「私は優れた人間である」「私は美しい」「~を成し遂げた私の人生には価値がある」、あるいは「私は劣った人間である」「私は醜い」「なにも成し遂げなかった私の人生には価値がない」などは、いずれも自己評価にあたるわけです。

なお、「なにごとにも100点満点を取らないと許されない」など、厳しく評価される環境で育った人は、自己評価の基準も厳しくなりがち

その結果、どれほど努力していい結果を出したとしても、他人からどれほど評価されたとしても、「自分はまだまだだ」と思ってしまうため、自己評価が低くなりやすいのです。

仮に厳しい評価を下すのが他人であったとすれば、その人と距離を置き、その人のことばが耳に入らないようにすればいいだけ。

ところが評価を下すのが自分自身だと、そういうわけにもいかないだけに厄介。

しかも自己評価が低いと、「自分なんてダメだ」「なにをやっても無駄だ」といった気持ちになりやすいので、自己肯定感も持ちづらくなってしまうことに。(196ページより)

信頼できる他人の存在

しかし自己評価が高いからといって、自己肯定感が得られるわけでもありません。

自己評価が高い人は、自分の仕事の成果や努力、用紙などについてはそれなりのものであるという自負があるものの、評価から切り離されたときの自分を認めてあげることができないもの。

基準を満たしている間しか、「自分はOKだ」と思うことができないということです。

つまり評価が高かろうと低かろうと、評価するのが他人であろうと自分であろうと、他人の価値観やルールに従って生き、「評価」に縛られ振り回されている限り、なかなか自己肯定感を得ることはできないわけです。

しかも自己肯定感を持てないと、他人の評価によって自分にOKを出そうとしてしまうため、ますます他人の価値観やルールに縛られるという悪循環に陥ってしまうことにもなりかねません。q

でも逆に、他人の価値観やルールにNOを言い、自分のルールで生きるようになると、当然ながら「評価」に振り回されにくくなります。

いわば、それが自分を肯定できるということ。

自己肯定感を持てるようになると、自分で自分を責めなくなり、失敗しても「まあ、いいや」「なんとなかるだろう」と思えるようになるもの。

自分の存在と行いを、切り分けて考えられるようになるということです。

そのため焦りや不安がなくなり、心に余裕と自信が生まれ、ますます、自分にとってよくないものや合わないもの、不安なものにNOを言いやすくなるという好循環に近づけることに。

もちろん、「自己を肯定する」「自己肯定感を得る」というようなことは、軽々しく口に出せるほど簡単ではないでしょう。

しかし、それでも自分に対してYESを言い、受け入れていくことは決して不可能ではないと著者は信じているそうです。

なぜなら、そういった変化を遂げた人たちを、実際に見てきたから。

ただし、そのためにはどうしても欠かせないものもあるといいます。それは、「自分を一方的にジャッジせず、自分の欠損や欠点を認めてくれる、信頼できる他人の存在」。

人は自分ひとりの力では、なかなか自分を肯定することができません。

また、信頼できる他人との間で「NOを言っても大丈夫」という体験を積み重ねないと、なかなかNOを言う勇気を持つこともできないでしょう。つまり、

・一人でも二人でも、自分を欠点ごと受け入れてくれる、信頼できる他人がいること(他人への信頼)。

・そのような他人が存在する「世界」そのものを信頼し、世界とのつながりを感じ、「世界は決して怖くない」「自分は世界とつながっており、一人ではない」と思えること(世界への信頼)。

・そのような他人と世界の存在をよりどころにし、「自分は自分であって大丈夫」という、自分自身への信頼感を抱くこと(自分への信頼)。

(201~202ページより)

この3つが必要不可欠だということです。(199ページより)

自分の弱さ、いびつさ、未熟でかっこ悪いところを認め、それらをも引き受けた「嘘のない物語」は、ありのままの自分を「それでもいいよ」と肯定してくれると著者は記しています。

それが、永きにわたって人生を支えてくれる「しなやかな強さ」をもたらしてくれるとも。

もしも自分として生きることにつらさを感じているのであれば、本書を参考にしてみてもいいかもしれません。

Photo: 印南敦史

Source: アスコム

メディアジーン lifehacker
2020年2月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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