<東北の本棚>怪異体験し古里再発見
[レビュアー] 河北新報
あなたは妖怪好きかな? 人気だよね、「ゲゲゲの鬼太郎」。ねこ娘にねずみ男、いろんなキャラクターが出てくる。ところで東北にも個性的な妖怪がいっぱいいること、知ってた?
物語の舞台は、とある里山テーマパーク。ここには東北6県の古民家が集められていて、夏休みに小中学生が宿泊体験にやって来る。「岩手の家」に泊まった涼平の場合。南部曲がり屋のお世話係の「遠野さん」は、赤黒い顔をしている。食事の時、うっかりおわんを割ってしまった涼平は、そっくりのおわんが川を流れて来るのを見つける。拾おうと手を伸ばすと、水からにゅっと手が出てきて-。そう、アレに遭っちゃったみたい。
一話ごとに、大酒飲みの「三吉鬼(さんきちおに)」や女に化ける大蛇の「沼御前(ぬまごぜん)」なんてのが登場する。妖怪だけじゃない。ずんだ餅とかバター餅、イカニンジンと素朴でおいしそうなご当地料理が振る舞われ、読んでいて旅行気分を味わえる。
夜には大雨が降って雷が鳴り、妙なことが起こりそうな気配。「宮城の家」を選んだ真紀は、最終日の「みちのく盆フェス」を楽しみにしていた。でも盆踊りの輪の子どもたちは、みんな魂を抜かれたような表情で漂っている。コスプレ参加はいいけど、周りの大人は変装が凝り過ぎてもはや人間に見えないほど。え? 本当に人間なの? お盆に集まったのは一体…。
6県の怪異スポットを巡るバスツアー編に続くシリーズ第2弾だよ。宮城県の作家3人が力を合わせて書いたんだ。妖怪と人とが昔から一緒に暮らしている東北って、ゆかいで奥深い。すてきな古里だねって伝えたいんだそう。
でも油断しちゃ駄目。ページをめくった先に結構ガチな恐怖が潜んでいる。心配な子は、家族や友だちと一緒に読んでね。
新日本出版社03(3423)8402=1540円。