読めば世界が違った場所に見えてくる? 最高にバカバカしいサイエンス本

レビュー

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ハウ・トゥー:バカバカしくて役に立たない暮らしの科学

『ハウ・トゥー:バカバカしくて役に立たない暮らしの科学』

著者
ランドール・マンロー [著]/吉田三知世 [訳]
出版社
早川書房
ISBN
9784152099099
発売日
2020/01/23
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

最高にバカバカしくて面白い 米国発の科学エンタテインメント

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 最高にバカバカしいサイエンス本が帰ってきた。著者ランドール・マンローは、米国で自作漫画のサイトを運営する人物だが、そのシンプルきわまりない絵柄とは裏腹に、かつてNASAで働いていた元エンジニアという顔を持つ。その前著『ホワット・イフ?』は、読者から彼のサイトに寄せられた突拍子もない質問(「光速の90%で野球ボールを投げるとどうなるか」「ヨーダのフォースパワーは何ワットか」など)に、さらに突拍子もない「科学的」回答を返した問答を集めた本で、かのビル・ゲイツも絶賛するなど、世界でベストセラーとなった。

 今回の新著『ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学』のテーマは、生活で直面するちょっとした問題(スマホを充電するとか、ケーキのロウソクを吹き消すとか)を、科学の力で解決するというものだ。だがそこに投入される解決策は必要以上に壮大で、限りなくバカバカしい。

 例えば、プールを満たすための大量のペットボトルを開けるあらゆる方策を検討し、「核兵器はおそらく優れた栓抜きにはならない」という結論を導き出す。カンザス川を歩いて渡るため、川の水を全部蒸発させることを考え、それには電気ポットが3億個必要と算出する。だがそれらを同時に働かせると、水蒸気の柱が立ち昇ってキノコ雲を形成し、あたりはポットの熱で溶岩の湖と化してしまう―といった想定を、実に几帳面にしてみせる。発想力豊かなアイディア、卓越した検証能力、該博な科学知識、並外れた計算能力、これらすべてが全く無駄に費やされるという、実に清々しい一冊だ。

 腹を抱えながら読み終わった後には、あなたもアイディアが泉の如く湧き出し、世界が違った場所に見えてくる(かもしれない)。科学エンタテインメントかくあるべしという一冊である。

新潮社 週刊新潮
2020年2月20日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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