【自著を語る】女の子が生きる武器になる「生理」教育

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【自著を語る】女の子が生きる武器になる「生理」教育

[レビュアー] 宋美玄(産婦人科女医、医学博士、性科学者)


宋美玄さん

 この本をつくるきっかけになったのは、女の子の母親でもある担当編集者からの「生理のことを、娘にちゃんと教えられない」という声でした。

 これは困った事態だと思いました。
 私にも、小学生の娘がいます。
 なんとかしなければ。
 そこで、小学生の女の子とその親の役に立つような、生理の本をつくろうということになりました。

 小学生の親世代である30~40代は、生理についてよく知らない人も多いのです。
 初潮を迎える10歳頃からはじまり、生理を長年経験してきているにも関わらず、正しい知識を持ち合わせていない。
 それは、子どもの頃に学校や家庭できちんと教えてもらっていないからに他なりません。

 教える立場にある先生や親に正しい知識がなかったり、生理に対する偏った意識を持っていたり。そんなケースが多かったことと思います。
 私自身も、母親から「マセた子は生理になるのが早い」という嘘の情報を聞かされてきました。だから生理になったとき、マセていると思われたくない私は、ずっと親に隠していたんです。
 半年ほどしてバレてしまうのですが、そのとき「お祝いだ」と言って赤飯を炊かれたのが、すごーくイヤだったのを覚えています。

 このように、誤った知識のもとで、生理のことを「めでたいもの」、もしくは「はずかしいもの」「いやらしいもの」などととらえる人は、今でも多いのではないのでしょうか。

 生理というのは、女性の体内で起こる現象のひとつにすぎません。
 子宮やホルモンの働きによって経血が排出されるという、ただそれだけのこと。
 特別ポジティブにとらえたり、ネガティブにとらえたりする必要はありません。生理のことをちゃんと知っていれば、わかるはずですよね。
 子どもにはぜひ、正しい知識に基づいてニュートラルに、生理のことを教えてもらいたいなと思います。

 また私は、子どものためだけではなく母であるあなた自身、いやすべての女性、ひいては男性も、いま一度、生理について学び直すことをおすすめします。

 たとえば、100年前と比べると生理の回数が9倍以上になっていることをご存知でしょうか。
 昔は子どもをたくさん産んでいたので、それだけ生理が少なかったんですよね。
 回数がここまで変われば、体にもたらす影響ももちろん変わります。
 生理との付き合い方も、時代にあったものにする必要があると思います。

 ちなみに、私を含めた女性産婦人科医は、ミレーナと呼ばれる子宮内避妊システムやピルを活用し、生理をコントロールしている人が多数派のように感じます。
 とくにミレーナは、避妊のほか、生理痛や過多月経の緩和などに効果的なものなのですが、知らない人も多いのが現実です。

 そのほか、生理痛のときは我慢せず早めに鎮痛剤を飲んだほうがいいということや、生理の重い人はピルを活用すること、PMSのときは周囲に理解してもらったほうがいいということなども、ぜひ知っておいてほしいです。
 黙って我慢すべきものと思い込み、生理のたびにつらくなるのはもうやめましょう。

 正しい知識のもとで、生理に適切に対処する。
 そんな当たり前のことによって毎月の生理の負担が減れば、QOL(人生の質)が上がると言っても過言ではありません。

 ぜひ、生理について学び直してみてください。
 この本がきっと、その役に立つはずです。
 子どもに手渡してもいいですし、一緒に読みながら学ぶのもおすすめですよ。

小学館
2020年2月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

小学館

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