『必ず成果につながる「商品ブランディング」実践講座』
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そもそもブランディングってなんだっけ?顧客に期待され続けるための基礎知識
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
上司から「社運を賭けた新しいサバ缶のブランディングを任せたい」と言われたけれど、なにをどこから始めたらいいのかわからない。
そもそも、ブランディングってなんなんだろう…?
『必ず成果につながる「商品ブランディング」実践講座』(村尾隆介 著、日本実業出版社)は、そんなときのサポートになりたいとの思いから書かれたのだそうです。
先に大雑把なことをいえば商品ブランディングとは、あなたの商品に高感度やインパクトを加えることです。あなたのサバ缶の他にもスーパーの棚には無数にライバルが並んでいます。
その中でも輝いて見えること、特別な何かが感じられること。「安いから」で手に取られるのではなく少しくらい割高でも「試してみたい」と思わせるパワーがあること。
つまりあなたのサバ缶を“ひとつ上の商品”に見せること。それがブランディングです。(「はじめに ブランディングで商品の好感度をアップ」より)
そのためにはデザイン力を高めたり、ネーミングを際立たせたり、什器やPOPにこだわったり、ネットでユニークな発信をしたり、それらをミックスしたり、できることはたくさんあるわけです。
そこで本書では、すぐに取り入れられるブランディングのノウハウをわかりやすく解説しているわけです。
きょうは序章「ブランディングに着手する前の基礎知識」のなかから、まず抑えておきたいブランディングの基本を抜き出してみたいと思います。
ブランディング担当として恥をかかない基礎知識
著者によれば、そもそも「ブランド」ということばの語源は「家畜に押した焼き印」。
「焦げる」「燃える」を意味する“BURN”の受身形である“BURNT”が変化して“BRAND”になったという説もあるのだとか。
いずれにしても、そのBRANDに現在進行形の“ING”を足してブランディングとなったわけです。
それは、単なる商品をブランドと呼ばれる域にまで昇格させる行為だということになります。
でも、焼き印がどこからどうなって今日のブランドに発展したのでしょうか?
言うまでもなく、当時の家畜への焼き印は所有者がわかるように押されたものでした。
しかし時間の経過とともに、その食肉の品質や特徴を示す証に発展していくことになったのです。
「このマークが焼き印された豚は脂の甘味が他とは段違い」だというように、本来は「所有の証」だった焼き印が、「自分の食肉の特徴や多商品との違いを示す証」にシフトしていったということ。
そうした「違い」を宣言したとしたら、売り手は当然のことながら、そのロゴに偽りないように常にクオリティを維持しなければならなくなります。そうでないと、信用を失ってしまうからです。
つまり、求められるのは「特徴」「違い」「差別化」「クオリティの維持」、そして「信用」。すべて、ブランドの概念と紐づくものであることがわかります。
ロゴ自体が大事なのではなく、ロゴがついていることで保証される品質や他商品との違いを世間に知られることが大切だということです。(22ページより)
ブランドは人の頭のなかで生まれるもの
「うちの商品には特徴や違いがあって、他社のものとは差別化がなされている」と売り手側が一方的に叫んでいるだけでは、商品はブランドに昇格しません。
その商品の特徴や違いを買い手側も認め、それが広く認知されているかどうかが重要なのです。
言い換えれば、売り手と買い手の双方が商品の特徴や違いといった情報を共有できたとき、初めてその商品はブランドと呼ばれる域に達するということ。
さらに言えば、ロゴだけを見たお客様が「このロゴのついた豚肉は、脂の甘味がすごくいいのよ」というような会話を友だちと交わすようになったとしたら、それは本物だということになるわけです。
ロゴマークをつくること=ブランディングと解釈している企業は多いです。デザイナーの中にも、そういう方は少なくありません。
違うんです。
ロゴが付いている意味や世界観が世間に知られて、はじめて商品はブランドに昇格するんです。(24ページより)
ロゴが持つ意味が世間に知れ渡るのは、売り手にとって喜ばしいこと。しかし、怖いことでもあると著者は記しています。
お客様がそのロゴの意味、つまり商品の特徴や違いを期待して購入する以上、売り手はクオリティを死守しなければならないからです。
販路や生産キャパが小さい段階ならOKだったとしても、評価が高まってオーダーが増え続け、関わる人、販売店や支社が増えていったとしたらどうでしょう?
どんなにビジネスが大きくなろうとも、売り手は客様が期待する特徴や期待を維持しない限り信用を失うことになります。
別の表現を用いるなら、売り手は買い手であるお客様に「約束」をしているのと同じこと。つまり、ブランドとは約束。
こう考えると、ブランドに対する理解がより深まるといいます。(24ページより)
ブランディングはコミュニケーション活動
昔の家畜の話であれば、キーワードも「家畜(豚肉)」「焼き印」「世間の評判(クチコミ)」といたってシンプル。
ところが、現代社会における売り手のコミュニケーション手段ははるかに複雑です。
ウェブサイト、メルマガ、ブログ、各種SNS、雑誌、冊子、フリーペーパー、テレビ、ラジオ、店頭ディスプレイなどなど、挙げていったらきりがないほど、売り手と買い手の間には接点が存在しているわけです。
言い換えればそれらは、企業が行う顧客とのコミュニケーション。
そのコミュニケーションを通じて、人は商品のことを知り、それをブランドとして認知するということです。
見方を変えれば、ブランディングとは企業が行う総合的なコミュニケーション活動だということにもなるでしょう。
よりていねいに言えば、「売り手が商品の特徴や違いを、買い手に対して総合的に伝えるコミュニケーション活動」だということになります。
ここで押さえておきたいポイントは次の2つ。ひとつはブランディングの正体は上手なコミュニケーション活動なのだということ。そして、もうひとつ。
(中略)ブランディングとは決して一般的に思われているようなロゴづくりやデザインをよくするだけのことではないということです。(26ページより)
わかりきったことだと思われるかもしれませんが、ブランディングを正しく理解するうえで、まずはこの点を踏まえておくべきかもしれません。(26ページより)
こうした“基本”を踏まえたうえで、以後はブランディングに関するさまざまなノウハウが明かされていきます。
1項目=400字以内と文字数が少なめなのは、ブランディングの楽しさが伝わるようにとの思いが根底にあるから。
したがって読者は、知りたいことを効率的に身につけることができるのです。
自社商品の価値をさらに高めるために、利用してみてはいかがでしょうか?
Photo: 印南敦史
Source: 日本実業出版社