人はどう生きてどう死ぬのか? 看護・介護現場の貴重な証言集

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Gift 物語るケア

『Gift 物語るケア』

著者
井部俊子 [編]/いいね看護研究会 [協力]
出版社
日本看護協会出版会
ISBN
9784818022362
発売日
2019/11/28
価格
2,750円(税込)

書籍情報:openBD

人はどう生きどう死ぬのか 看護・介護現場の貴重な証言集

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 昨年、一人暮らしをする88歳の母の家を大きくリフォームした。足腰が弱くなり、生活に不安が出始めて、初めて今後の希望を聞くと、ヘルパーさんの手を借りて現状のまま家で暮らしたいと強く言う。ならばと、ケアマネ、看護師、介護士、専門業者の知恵を借り、手すりをつけ段差を解消し、介護ベッドや高齢者用の台所を一気に導入してみた。

 日常の動線を見直すだけで、こんなに変わるものなのか。母は驚くほど元気になった。看護や介護の専門の知恵をさらに知りたいと痛感した。

 本書は日本看護管理学会例会「病院看護と訪問看護のコラボ―本当に“事例から学ぶ”しくみを作ろう」というコンセプトから作られた「いいね看護研究会」の活動から生まれた。看護実践の一場面の写真と撮影の意図をポスターのように掲示し、研究会参加者がコメントを書き入れ、その後ディスカッションした33例が紹介されている。信頼を置く看護職が撮ったものだからだろう、被写体は自然で状況がよく理解できる。

 急性期病院、慢性期病院、介護施設、訪問看護ステーション、大学など、参加した看護職の活動の場は多様である。一口に看護職と言っても、世代も経験も全く違う。それぞれの現場を語り合うことは発見や反省を見出し、コミュニケーションにも役に立つ。

 患者や家族などの当事者にとっても、どこまで要求できるのか、何をどうしたらいいのかが明確に理解できる。行き場のない不安や不満は、プロの手を借りることで解消されることも多いのがよくわかる。

 在宅療養でひげ剃りができるようになった男性、認知症の妹の介護のため自分の病気は通院で治す91歳の兄、入院患児のきょうだいへのケアなど看護職それぞれの実体験を写真と経験談で追体験できるのだ。

 人がどう生きてどう死ぬか、その手伝いをどのようにしてもらうのか。自分ならどうしたいか、を改めて考えさせられる貴重な証言集である。

新潮社 週刊新潮
2020年2月27日梅見月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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