「英語 独学」検索1位を記録した若者の「できる」を可視化するプロセス

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英語日記BOY 海外で夢を叶える英語勉強法

『英語日記BOY 海外で夢を叶える英語勉強法』

著者
新井リオ [著]
出版社
左右社
ジャンル
語学/英米語
ISBN
9784865282634
発売日
2020/01/04
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

若者世代の心を動かした“できる”を可視化するプロセス

[レビュアー] 倉本さおり(書評家、ライター)

 誰もがひとつふたつ持っている「ぼんやりとした夢」のうち、「英語が話せるようになる」というのはなかなかの高順位につけているんじゃないだろうか?

 とはいえ留学や英会話スクールとなると元手がいる。まずは費用を貯めようとバイトに勤しんだり、分厚いテキストを前に尻込みしたりしているうちに、いつしか当初の熱は冷め、ハードルの高さだけが残る―。そんな負のループに鮮烈な一石を投じたのが本書だ。「自伝的学習本」と銘打たれた本書、発売から1週間で重版出来、1カ月で3刷1万部と、膠着した業界に旋風を巻き起こしている。

 著者の新井リオ氏は現在25歳。大学1年生だった2013年から「英語日記」を使った独自の英語勉強法をつづったブログがおよそ2年にわたって「英語 独学」Google検索で1位(累計300万PV)を記録し話題となった人物だ。

「そもそもはうちの編集部でアルバイトをしていた大学生の女の子が、朝の定例会で新井さんのブログについていきいきと話してくれたのが書籍化のきっかけでした。まさに彼女の世代にとって、新井さんの示してくれる“夢の叶え方”こそが必要なものだったんだろうなと」(担当編集者)

 実際、本書で提示される勉強法は、お金をかけずにできるものがほとんど。例えばLINEをデジタル単語帳にしたり、YouTubeの発音解説動画やiPhoneの音声認識ツールを発音チェックに活用したり。スマホやインターネット環境さえあれば今すぐにでも始められるものばかりだ。

 しかし最大の特色は、「英語が話せる」という状態の定義を自分自身で決めていく点にある。

「今の若い世代は、周囲の目を気にするぶんとても慎重で、“できる”のハードルをやみくもに上げて苦しんでしまう。新井さんはそうやって高さだけが嵩んだハードルを疑い、自分にとって本当に必要なものを設定する作業を詳らかにしていくんです」(同)

 つまりは“できる”の主語を取り戻す。すべての夢の根幹にあるそのプロセスを見事に可視化した一冊だ。

新潮社 週刊新潮
2020年2月27日梅見月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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