『ずらし転職 - ムリなく結果を残せる新天地の探し方 -』
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1000人に1人の人材となるための第一歩。「ずらし転職」を始めてみよう
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『ずらし転職 – ムリなく結果を残せる新天地の探し方』(村井庸介 著、ワニブックス)の著者は、大学卒業後、社会人となった10年の間に7回もの転職を経験してきたという人物。
いわゆる“ジョブホッパー”ですが、残念ながらすべての転職が成功したわけではなく、大半がうまくいかなかったのだとか。
現実的には、「なぜ、うまくいかなかったか」を考え、改善を繰り返してきた10年間だったと振り返っています。
つまり本書は、そうした経験(失敗)から見えてきたことをまとめたもの。とはいえ、そんな経験をしたからこそ実感することがあるそうです。
それは、「生き生きと仕事を続けるには、『自分らしさ』を活かし、相手に貢献するというプロセスが欠かせない」ということ。
なお、ここでいう「自分らしさ」とは、「自分が(他者とくらべて)無理なく、かつ高い制度で行うことができ、相手に貢献できること」。
「自分らしさ」を土台に持ちながら、柔軟に変化していく。そんな生き方が、これからの時代にはより重要になる。
そう考えて、本書を書いたというのです。
本書は、いかに「自分らしさ」をカギにキャリアを構築していくか。その方法を「ずらし転職」と名づけ、私自身のキャリアの変遷をお伝えしながら、私が転職希望者などの方々向けに開催しているセミナーの内容を凝縮してお伝えしています。
いかにキャリアをつくるかという話から、どのように自分らしさ・強みを見つけるか、自分らしさをどう活かしていくかなど、いま、キャリアに迷う人たちの問いに答えることができているのではないかと思います。(「はじめに 転職の不安は人生にきちんと向き合おうとしている証」より)
きょうは第3章「1000人に1人のキャリアをつくる方法」のなかから、「ずらし転職」に関する基本的なポイントをピックアップしてみたいと思います。
1000人に1人の人材になるのはむずかしくない
1000人に1人のキャリアをつくるためのポイントは、いろいろな仕事を経験し、戦う領域を絞っていくこと。
しかも既存の世界で上位にいることが大切なのではなく、重宝されることこそが重要だと著者は言います。
「この分野のことだったらあの人に聞いてみよう」というポジションをいかにつくるかというのが、重宝されるきっかけになる重要なポイントです。
1000人のなかでナンバー1になるのではなく、あくまで1000人いて1人しかいない人材になることが大事なのです。(101ページより)
ナンバー1を目指すこともいいけれども、先を進む先輩方がいる同じ分野で同じ戦い方をするのは非効率的。
しかし人が少ない分野を狙って挑戦するのであれば、効率的に希少性をつくれるという発想です。
そして大切なのは、新しいテーマを選ぶということ。
新しいテーマで掛け算の要素をつかむことができれば、あとは自分の好みで他の好きな産業と掛け合わせていくこともできるからです。
新しい産業やテーマに旗を立てておくと、経営者や上層部の目に止まりやすいというメリットもあるそう。
年齢やポジションに関係なく直接上層部と話をする機会を得られるため、キャリアが広がるチャンスをつかめるということです。(100ページより)
「ずらし転職」を始めよう 最初の一歩の進み方
著者は本書において、掛け算でキャリアをつくっていくことの重要性を強調しています。
しかし実際のところ、足し算でキャリアをつくっている人のほうが多いのではないでしょうか? 「人事の仕事をしていたので、別の企業でも人事の仕事をしたい」というように。
そうした考え方は、経験を活かすことができてよいことのように思えます。
しかし人事の仕事も、人材エージェントの助けを借りながら面談を設定したり、SNSを使って情報発信したり、うまく広報と連携してマーケティングしたりしないと、人が集められない状況に変わってきています。
そんななか、「ずっと人事で求人広告のの作成や採用プロセスの調整や配置だけをやってきました」というような人が、将来も人事として必要とされるかは疑問だと著者は指摘するのです。
一度社内で異動をして、事業サイドでマーケティングなどの違う分野にチャレンジするなど、違う経験も持ち合わせていたほうが、予想外の状況になったとしても機転が効くということ。
足し算キャリアのほうが自身の心境として安心なのはわかります。加えて、採用する側も過去にやってきたことの延長線上にあるので、採用の理由を納得しやすいということもあるでしょう。考え方としてはスタンダードですから、これを大きく覆して転職活動を行うと難易度が格段に上がります。
そのため、キャリアを掛け算していくときは、いきなり転職で掛け算をしようと思わずに、社内異動から始めることをおすすめします。(113~114ページより)
たとえば社内で人事として優秀な成績を収めた人が「最終的に人事に戻ることになるとしても、一度マーケティングをやらせてください」と訴えたとすれば、「2年間やってダメだったら人事に戻します」という条件つきで移動というチャレンジが可能になるかもしれません。
そのため、いきなり転職するよりは、まず異動から挑戦するとよいと著者。
そして転職をしようというときは、ひとつの「軸」を決めて転職先を検討し、決定するようにすべきだといいます。
たとえばマーケティングを軸に大手企業からベンチャー企業、B to BのメーカーからB to Cのメーカーに移るなどの「ずらし方」をして、これまで自分が経験していない別のやり方を学ぶわけです。
ただし、自分のポテンシャルがわからない状態でまったく未経験の分野に行くことは、あまり賢い選択ではないそうです。
業界も職種も変えてしまうと、業界の経験値も、触手の肌感もないため、結果を残しにくくなってしまうから。
そのため、「少なくとも、その業界の肌感はわかる」というように、ひとつ同じ軸のうえでずらしていくことがおすすめです。
転職を、ただ単純に飽きたから、新しい職種や職場に異動すると捉えてしまうのはよくありません。(116ページより)
あくまで「次の異動先でどんな貢献ができるのか」という考え方が、「ずらし転職」の原理原則だということです。(112ページより)
実際に「ずらし転職」を行って、やりたい仕事をしている人、自分が取り組むべき仕事を見つけた人などの事例も盛り込まれているため、自分にあてはめて考えてみることも可能。
したがって、それが将来的な行動変化につながっていくことになるかもしれません。
Photo: 印南敦史
Source: ワニブックス