たった325グラムで生まれても目を瞠る“生命力”の強さ

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手のひらの赤ちゃん - 超低出生体重児・奈乃羽ちゃんのNICU成長記録 -

『手のひらの赤ちゃん - 超低出生体重児・奈乃羽ちゃんのNICU成長記録 -』

著者
高山 トモヒロ [著]
出版社
ヨシモトブックス
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784847098758
発売日
2020/01/27
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

たった325グラムで生まれても目を瞠る“生命力”の強さ

[レビュアー] 麻木久仁子(タレント)

 1年ほど前、こんなニュースがあった。「世界最小268グラムで生まれた男の赤ちゃんが元気に退院」。まさに手のひらにすっぽり収まるほどの小さな体が元気に成長した姿を見て「いやあ、日本の医療はすごいなあ」と思ったものだ。が、このニュースを本当に万感をもって受けとめた人たちがいる。同じように超低出生体重児の赤ちゃんを持つお母さんお父さんたちだ。超低出生体重児とは1000グラム未満で生まれた赤ちゃんのことである。母体保護法では妊娠して22週を迎えていない赤ちゃんは、お母さんのお腹の外では生きていかれず「流産」ということになる。逆に言えば22週に一日でも入っていれば、これは「早産」になり、救命措置医療を受けることができる。医学的に合理的な基準なのだろうが、親にとってはたったの一日が運命の分かれ目となる。

 本書で芸人・高山トモヒロさんは、かねてよりの知己である敏哉さんと佑里子さんご夫妻とおふたりが授かった奈乃羽ちゃんの、NICU(新生児集中治療室)での日々を描いている。奈乃羽ちゃんは生まれたとき325グラムだった。母乳を飲むにもわずか0・5cc単位、ときには綿棒に含ませて吸わせてやる。あまりにも早くママのお腹を出てしまった体は肺の形成がうまくいかず、腸も破れてしまい、肝臓にも負担がかかり、視覚にも異常が出て……。あまりにも小さなその体の弱々しさ、はかなさを思わされつつページを繰る。が、その日々を追っていくといつの間にか、生きようとする生命の驚くほどの強さが迫ってくる。危機的な状況でも、ママやパパの呼びかけに応えて、医学でははかりしれないような奇跡を見せる瞬間があるのだ。奈乃羽ちゃんは弱々しくもはかなくもない。生命力とはなんと不思議な強さを見せるのだろう。そして、ママもパパも、強くなっていく。

「なぜ、奈乃羽のことを本にしたいと思ったのかと言うと、世の中で起きる子どもへの虐待や殺人をひとつでもなくしたいからなんです。赤ちゃんが十月十日で五体満足に生まれてくる奇跡を大事にして、未来しかない子どもたちを守りたいんです」

 まさにこの世に生まれる全ての命はギフト、贈り物だ。どんな場面でもそこにあるのは「ありがとう。生まれてきてくれてありがとう。大好き!」という言葉である。ありがとうと言える巡り合いがそこにある。親として無上の幸せを感じることができた時間がある。涙なくしては読めないエピソードを前に、ただ祈りたいような気持ちになった。

新潮社 週刊新潮
2020年3月5日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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