『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』
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ゲイの精神科医Tomyが贈る、「日常の不安」を吹き飛ばすシンプルな言葉
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
ご存知の方も多いのではないでしょうか。
『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(精神科医Tomy 著、ダイヤモンド社)の著者は、オネエ言葉と毒舌で絶大な人気を誇るゲイの精神科医です。
ところで、初の著作である本書が誕生したことには、ひとつのきっかけがあったようです。
精神科医の仕事というのは、基本は病気かどうかを判断し、そのために必要な薬物療法を行うのがメインです。
気の利いたアドバイスなども沢山したいけど、多くの患者様がいらっしゃるので、割ける時間も限られてしまう。それにアテクシ一人が診ることのできる患者様は1日数十人。たかだか知れているわ。
でも、Twitterなら多くの人にアテクシの診察の一部を届けることができる。(「はじめに」より)
精神科医として15年程度の実績を持ち、かねてから日常で使えそうなことばのメモをたくさんストックしていたため、Twitterでそれらのネタを発信。
するとたちまち話題となり、わずか半年でフォロワー数が13万人を超えたというのです。
つまり本書は、そのTwittter『ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き♡』から厳選した「不安が吹き飛ぶ言葉」を集めたものなのです。
いくつかをご紹介しましょう。
否定
自分の意見を否定されることに慣れましょう。
他人と意見は違って当たり前だから、そんなことで腹を立てていたら エネルギーが枯渇します。それにね、自分の意見を否定されることと、 自分を否定されることは違うから。(69ページより)
自己肯定感
自己肯定って 難しいかもしれないわね。 ただ、最終的には 生きてるだけで凄いと思うの。
生きてるって、いろんなこと処理しながらバランスとってやっとこさできてることだから。上司から怒鳴られても、上手く家事育児ができなくても、努力が実らなくても、せいいっぱいやってるんだから凄いのよ。(96ページより)
劣等感
劣等感の強い人は、 理想が狭い傾向にあるわ。
いろんな生き方があるから、 いろんな理想があるはずなのに、 なぜか自分の理想はとても狭い。そんな狭いところにピンポイントで達成できる わけもないから、常に自分を認められない。劣等感に悩まされている人の問題は 努力じゃないのよ。考え方。 (113ページより)
このように、1ページごとにテーマを設定し、シンプルなことばを投げかけているわけです。
また、ところどころに挟まれている「Tomyの部屋 相談」というコーナーにも読みごたえがあります。
たとえば、こんな感じです。
「職場に合わない人がいるんです」
[相談]「職場に合わない人がいるんです。彼女は常に自分が正しいと思っていて、同僚の悪口や人格否定をするのです。全く考えが合わないのに無理やり同意を求めてきます。どうしたらいいのでしょう?」(43歳、女性)
どうしようもないから、どうもしない。
(ともに46ページより)
この相談に対して著者は、「こういう人は、聞く耳なんか持っていない」のだと答えています。
つまり、その人は単に認めてほしいだけだということ。認めてほしいから話しかけてくるので、考えを変えるはずもないわけです。
したがって、淡々と仕事をし、あまり相槌を打たないのがいちばん。
同意を求められたとしても、「そっかあ」「ふうん」と、自分がストレスにならない程度の適当な相槌を打っておけばいいのだといいます。
まともに聞いていないとわかると、そのうち相手もつまらなくなって、言わなくなるものだから。
あと、いつかアナタが彼女に悪口言われるかもしれないし、もう言われてるかもしれない。そこは覚悟でね。
まあ、こんな人のいうことは周りも相手にしない。言われたところでダメージなんかないから、大丈夫よ。(47ページより)
つまり、こういう人を改心させることはできないし、できたとしても、たいしてメリットにはならないはず。
だから放っておくのがいちばんだという考え方です。
しかも、そんな人のために自分のエネルギーを無駄遣いするのはもったいない話。そこで、エネルギーは説得する価値のある人のためにとっておきましょうと著者は記しています。
ムダがないから読みやすく、しかもメッセージがストレートに伝わってくるところが本書の魅力。
興味のあるページや、ランダムに開いたページから読んでみるのもいいでしょう。その結果、モヤモヤとした不安を解消できるかもしれません。
Photo: 印南敦史
Source: ダイヤモンド社