「自信のあるふり」して堂々と歩くのが、日常の不安・ストレスを解消する第一歩

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ウォーキング・セラピー

『ウォーキング・セラピー』

著者
ジョナサン・ホーバン [著]/井口景子 [訳]
出版社
CCCメディアハウス
ジャンル
哲学・宗教・心理学/心理(学)
ISBN
9784484201023
発売日
2020/02/28
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「自信のあるふり」して堂々と歩くのが、日常の不安・ストレスを解消する第一歩

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ストレスに満ちた現代社会においては、不安やうつに苦しむ方も少なくありません。

リラックスする余裕もないまま、仕事の成果を常に監視され、プレッシャーと対峙しなければならないわけです。

そんななか、最大の解決策は歩くことだと主張するのは、『ウォーキング・セラピー ストレス・不安・うつ・悪習慣を自分で断ち切る』(ジョナサン・ホーバン 著、井口景子 訳、CCCメディアハウス)の著者。

自身がウォーキングによってうつ病と依存症を克服したことから「ウォーキング・セラピー」を提唱したという臨床心理士です。

ウォーキングを始めると感情を整理するゆとりが生まれ、心を癒す自然の力を実感できるようになります。どんな天候であれ、自然の中に身を置くことで、いつの間にか失ってしまった地球との大切なつながりに再び気づけるでしょう。また、リラックスして、あらゆる「騒音」から逃れて自分の直感に耳を傾ける方法も学べます。

名づけて、「ウォーキング・セラピー」。その大きな利点は、簡単であることです。必要なのは、歩くための時間を確保すること、そして、心を落ち着かせて五感を活性化し、困難に向き合いながら歩ける場所を見つけることだけなのですから。(「はじめに」より)

重要なポイントは、はるか遠方の野生の地だけが「自然」ではないということ。大都会の到るところにも、公園やオープンスペースなどに自然は存在しているわけです。

そうした場所で地球を身近に感じ、環境とのつながりを実感することが大切だという考え方。

きょうは第2章「本当の自分への第一歩」に焦点を当て、ウォーキングについての基礎を確認してみたいと思います。ウォーキング開始に向けてすべきことが解説されているパートです。

準備をする

まず最初にするのは、スケジュール帳に歩く時間を書き入れること

過程の話や、言い訳は禁止。1週間先までの予定を確認し、ウォーキングのための1時間を確保することが目的だそうです。

1時間なんて長すぎるような気もしますが、どんなに多忙な人でも1週間に1時間くらいはひねり出せるはずだと著者。

そのため、スケジュール帳やオンラインのカレンダーに、いますぐ書き込んでほしいと訴えています。

歩く時間帯は、朝でもランチタイムでも夕方でもかまわないものの、著者が勧めているのは朝。

いうまでもなく、朝は新鮮な気持ちを感じやすく、1日の準備として心を整えることができるからです。

書き入れましたか?

私はこの本を通して、皆さんに指図するような態度はできるだけ控えるつもりですが、約束事が極めて重要な局面があるのも事実です。

ウォーキングの予定を書き入れることは、そんな約束事の1つ。(52ページより)

つまり変更することのできない「絶対に尊重されるべき務め」を設定しておくことが、弱気になったり、先行きに不安を覚えたりしたとき、自分の力を信じる土台となるわけです。(51ページより)

どこを歩くか

やみくもに歩き始める前に、まずは自宅の周辺環境を観察。

先にも触れたとおり、自然が少ないと考えがちな都会や郊外であったとしても、自然豊かな場所は必ず見つけることができるはずだからです。

自然の中を歩かなければウォーキング・セラピーの効果を得られないわけではありませんが、可能な限り、緑の多いエリアを探すことは重要です。たとえば、通勤の一部を徒歩に変えてはどうでしょう。

1時間早く家を出れば、ウォーキングをしても始業時間までに職場に到着できます。仕事を終えた後に公園や森、川沿いの道を選んで徒歩で帰宅するのもいいでしょう。(53ページより)

住んでいる地域の地図を広げ、緑の多いエリアや散歩に適した道を探してみることも、それ自体が楽しそうです。(52ページより)

歩き方

ウォーキング・セラピーに初めて挑もうとする段階では、多少なりとも不安や気分の落ち込み、ストレスなどを抱えているはず。

そのため、そうした内面の現状は往々にして、動きが遅い、視線が下がる、肩を落としているなどの形で外見にも表れるものでもあるでしょう。

もちろん、そうした重荷を背負っているような感覚はすぐには消えないかもしれません。しかし、それでも「荷物」を軽くするためにできることはあるはず。

たとえば、頭を下げて歩く代わりに、姿勢を意識して真っ直ぐに立ち、目的と自信を持って歩いてみることが重要なのだといいます。

「自信のあるふり」でもかまわないので、まずは5~10分試してみることが大切。

「振り」であってもピグマリオン効果(信じて願い続けたことが現実になる現象)が期待できますが、この段階では「自信を持って歩くことには意味がある」とだけ覚えておけばいいそうです。

しっかりした姿勢で歩いているときには、脳から体に「思い切って力強く動け」と指令が送られています。また、思い切り体を動かせるようになると、それが自己肯定感を醸成し、さらなる自信を生み出します。

一つ一つの動きが神経ネットワークに影響を与えますから、この訓練は、ウォーキングに前向きに取り組むための効果的なエクササイズとなります。(57ページより)

ネガティブなエネルギーをポジティブなものに変換できる点も、この訓練の効能だそう。それも一時的ではなく、長期的に

前向きなエネルギーが積み重なると徐々に、意思決定の際に自信を持って決断できるようになり、不安や先送りを減らすことにもなるといいます。(56ページより)

ウォーキングセラピーはシンプルですが、かといって手っ取り早い解決策ではないそうです。

一貫性と覚悟、マインドフルネス(物事をあるがままに受け入れる心のあり方)、立ちなおる力、覚醒する力が必要で、物理的にも心理的にも自分の足で立つ必要があるというのです。

したがって、一晩で成果が出るわけではないと理解し、定期的にウォーキングを続けることが大切。

十分な準備を行い、勇気を持って挑戦すれば、ストレスや不安が減ったり、思考が明瞭になるなど、さまざまな効果をもたらしてくれるといいます。

その気になりさえすれば、すぐにできること。そこで本書を参考にしながら、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

Source: CCCメディアハウス

メディアジーン lifehacker
2020年3月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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