共感力が高すぎて疲れてしまう「エンパス」は、病気ではなくひとつの才能

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共感力が高すぎて疲れてしまう「エンパス」は、病気ではなくひとつの才能

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「エンパス」という言葉を初めて聞く人も多いかもしれません。 エンパスとは簡単に言えば、共感力(エンパシー)が極端に強い人たちのことです。

(中略)エンパスは、5人に1人いるとも言われています。 人の気持ちがよくわかる人は「思いやりのある人」と呼ばれたりしますが、エンパスはただ思いやりのあるだけにとどまらず、人の感情や身体的な症状を、まるで自分のことのように感じてしまうのです。(「はじめにーー共感力が高すぎて疲れてしまうエンパスのための日本で初めての本」より)

LAの人気精神科医が教える 共感力が高すぎて疲れてしまうがなくなる本』(ジュディス・オルロフ 著、桜田直美 訳、SBクリエイティブ)にはこう書かれています。

たとえば同僚が偏頭痛で苦しんでいると、自分も頭が痛くなる。友だちが大切な人を亡くして悲しんでいると、自分もその悲しみをそのまま感じてしまうなど。

いいかえればエンパスの多くは、生きづらさを抱えているということ。

ちなみに著者は、自身もエンパスであるという精神科医。そのような立場から本書では、エンパスがその共感力と感受性を維持しつつ、この世で強く生きていくための方法を説いているわけです。

第2章「エンパスがまわりのストレスを吸収しないための技術」のなかから、いくつかの要点を抜き出してみましょう。

エンパスは病気ではない

現代の医療では、エンパスを正確に診断できないことが多いそうです。

他者の症状をそのまま吸収するエンパスの特徴が理解されず、心気症や神経症と誤診されたり、精神科に送られて抗うつ剤を処方されたりすることもあるというのです。

しかしエンパスには、もっと異なる治療が必要だと著者は主張しています。

またエンパスは、知覚の刺激の処理に異常があるとされる「感覚処理障害」というレッテルを貼られることも少なくないのだとか。

人混み、光、音、触覚などの刺激の処理がうまくできず、過度に反応してしまうと考えられているわけです。

とはいえ著者は、知覚の敏感さを「障害」とする考え方には反対しています。敏感さそれ自体は悪いものではなく、それどことか才能のひとつだと考えているから。

つまりエンパスもまた「普通」の人たちでしかなく、ただ感受性が平均より強い傾向にあるというだけのこと。

むしろエンパスの存在は、人間にすばらしい多様性があることの証明でもあるといいます。

「身体エンパス」と「感情エンパス」とは?

エンパスのための健康法のファーストステップは、エンパスである自分の特徴をよく理解すること。

エンパスにもいろいろなタイプがあるというわけですが、ここではそのなかから「身体エンパス」と「感情エンパス」が紹介されています。

なお、この2つは必ずはっきりと分けられるわけではなく、両方を兼ね備えたエンパスもいるそうです。

まず、他者の身体的な症状を、まるで自分のことのように感じるのが身体エンパス。冒頭でも少し触れましたが、一緒にいる友だちが「お腹が痛い」と言ったとしたら、いきなり同じようにお腹が痛くなってきたりするわけです。

または同僚が偏頭痛で苦しんでいると、エンパスも頭が痛くなってくるということ。

しかし逆に考えればそれは、他者の活力やポジティブなエネルギーを、自分にも取り込めるということでもあるでしょう。

たとえば著者の患者であるエンパスの夫婦は、妻のほうがヨガのクラスを受けると、遠く離れたところにいる夫も、体がリラックスするのを感じると言っているそうです。

一方、おもに他者の感情を吸収するのが感情エンパス。たとえばコメディ映画を観に行ったとしても、映画館でうつ状態にある人の隣に座ると、落ち込んだ気分で映画館を後にすることになったりするわけです。

エンパスは相手との距離が近くなる程、相手の感情の影響を大きく受けるというのです。

ただし身体エンパスも感情エンパスも、専門的な訓練を受ければ、正しい医学的な診断を直感で下せるようになるといいます。

それは彼らに、他社の症状をそのまま感じる能力があるからにほかなりません。(70ページより)

タイプ別エンパス診断チェックリスト

自分が身体エンパスか、感情エンパスかを知っておくのは大切なこと。そこで、次のチェックリストで自分がどのタイプのエンパスか診断してみることを著者は勧めています。

「身体エンパス」チェックリスト

・痛みを訴える人の近くにいるときに、自分も同じ痛みを感じたことがある

・人混みの中にいると実際に気分が悪くなる

・自分では本物の症状だと確信しているのに、「気のせいだ」と言われたことがある

・近くにストレスを感じている人がいると、その人のストレスが自分の体の症状として表れたりする

・一緒にいるとエネルギーが湧いてくる人と、逆にエネルギーを奪われる人がいる

・体の不調で医者にかかっても、効果的な治療をしてもらえないことがよくある

・慢性的に疲れている、または原因不明の症状がある

・人混みは疲れるので家にいるほうが好き

・糖分、アルコール、加工食品に体が敏感に反応する

「感情エンパス」チェックリスト

・不安、怒り、不満といった他者の感情から影響を受ける

・誰かと口論になると、神経の興奮が続き、感情の二日酔いのような状態になる

・人混みに行くと気分が落ち込む、または不安になる

・ストレスを感じている人がいると、癒してあげたくなる

・相手が口に出さなくても、その人の感情を直感的に理解することができる

・他者の感情と自分の感情を区別するのが難しいと感じるときがある

・人助けのほうが大切で、自分のケアがおろそかになることが多い

・苦手な人がいる、ストレスを感じるといった状況で、気を紛らわせるために食べすぎることがよくある

・糖分、炭水化物、その他の特定の食物で、気分の変調が激しくなることがある

▼結果を分析する(「身体エンパス」と「感情エンパス」ごとに「はい」の数を集計する)

「はい」が1個から2個:部分的にそのタイプのエンパスである

「はい」が3個から4個:中程度にそのタイプのエンパスである

「はい」が5個以上:間違いなくそのタイプのエンパスである

(以上、74~75ページより)

自分がどのタイプのエンパスかがわかれば、エンパスに特有の生きづらさは大幅に軽減できるはず。

繊細さは自分だけの特別な才能なのだから、ただその才能を活かす方法を学べばいいということです。(73ページより)

エンパスであることはひとつの才能であり、天から与えられた贈り物。本書のなかで著者は、繰り返しそう主張しています。

だとすれば、自分がエンパスだという人はもちろん、大切な人がエンパスだという人、あるいはエンパスの子どもを育てているという人も、本書から多くのことを学べそうです。

Photo: 印南敦史

Source: SBクリエイティブ

メディアジーン lifehacker
2020年3月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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