スクエア・アンド・タワー 上・下  ニーアル・ファーガソン著 東洋経済新報社

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スクエア・アンド・タワー(上)

『スクエア・アンド・タワー(上)』

著者
ニーアル ファーガソン [著]/柴田 裕之 [訳]
出版社
東洋経済新報社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784492371268
発売日
2019/12/06
価格
2,750円(税込)

書籍情報:openBD

スクエア・アンド・タワー(下)

『スクエア・アンド・タワー(下)』

著者
ニーアル ファーガソン [著]/柴田 裕之 [訳]
出版社
東洋経済新報社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784492371275
発売日
2019/12/06
価格
2,750円(税込)

書籍情報:openBD

スクエア・アンド・タワー 上・下  ニーアル・ファーガソン著 東洋経済新報社

[レビュアー] 篠田英朗(国際政治学者・東京外国語大教授)

 本書の題名である「スクエア・アンド・タワー」は、イタリアのシエナの光景がイメージされているという。古くから人間は、塔と広場、つまり垂直的な秩序と、水平的なネットワークの二つの人間関係が織りなす社会の中で、生きてきた。

 人間は、組織に属しながら、組織を離れた人的つながりも持っている。しばしばわれわれは、組織の分析だけに多大な関心を払う。しかし、非組織的な人的ネットワークを見なくては、歴史も、現代世界も、理解することはできない。技術革新によって世界の人々のネットワークが新しいスピードと広がりを見せるようになった。今こそ、ネットワークの重要性を再検討しなければならない。

 簡明かつ強力なメッセージだ。著者は、これを裏付けるために、豊かな知識を駆使して、無数の事例を示していく。

 本書の中では、何度も様々な登場人物の人間関係を表したネットワーク図が登場する。数多くの人々が、相互に複雑に結びついている様子を示す図だ。

 上・下巻あわせて60章にわたる本書の構成それ自体も、あたかも一つのネットワーク図のようになっている。18世紀の秘密結社イルミナティから始まり、現代のインターネット社会で終わる本書の叙述は、大きな流れとしては西洋社会の近代史を辿(たど)っていくものになっている。しかしそれは決して単線的な歴史記述ではない。次々と多種多様な事例が、博学な著者による複雑な背景説明とともに立ち現れ、歴史横断的な相互の結びつきも見せつけていく。

 本書を一つの歴史書として読もうとするならば、あるいは困惑が訪れるかもしれない。しかし、本書が表現するのは、時間と空間をこえて縦横無尽に張り巡らされる人間のネットワークのイメージだ。その複雑な軽やかさこそ、本書の不思議な魅力だ。柴田裕之訳。

読売新聞
2020年3月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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