癖と灰汁の強い本格ミステリー。期待の新人 『暗黒残酷監獄』城戸喜由

レビュー

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暗黒残酷監獄

『暗黒残酷監獄』

著者
城戸喜由 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334913366
発売日
2020/02/20
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

癖と灰汁の強い本格ミステリー。期待の新人

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 清家(せいけ)家は両親と兄と姉、そして末っ子の僕、高校生の椿太郎(ちゅんたろう)の五人家族。父の胤也(かずや)が作った音楽の莫大な印税で暮らす。幸せな家族であったはずだ。

 だが兄の終典(しゅうすけ)は数年前に自殺し、今度は姉の御鍬(みくわ)が死んだ。それも遺体は、十字架に磔(はりつけ)にされており、財布の中にメモを残していた。「この家には悪魔がいる」。数年前、おばからDNA検査キットが送られてきた。試してみると、兄と自分は父の子ではなく、姉だけが父と母、夕綺(ゆうき)の子であった。しかし母の不貞は家族の中で不問にされ、絆はさらに固くなったはずであった。

 ではなぜ姉は死んだのか。僕は家族の身辺調査を始めた。一人で行うつもりだったのになぜか女の子が絡んでくる。それを振りほどくわけでもなく、当てにするわけでもないが、状況に応じて一緒に行動する。時には寝るし、時には意見交換をする。

 少しずつほどけてくるそれぞれの過去の秘密。それは僕の生まれるずっと前からの因縁であり、母の復讐、父の嫉妬が混ざり合い、どす黒い「何か」が存在していた。

 謎が解決しても僕は淡々と暮らすつもりだ。人の思惑など、これからの自分の人生と何も関係ない。誰とも何も関わるつもりはない。そのはずだった。

 第23回日本ミステリー文学大賞新人賞の最終選考会は大荒れに荒れたという。四人の選考委員の半分は最高点、半分は最低点。意見はまっ二つだった。癖の強い文章と共感できない主人公。登場人物のだれにも感情移入できず、テーマも結末も暗い。でも私の好みだ。みんながハッピーエンドになることなんてあるわけないんだ。だったら思い切り灰汁(あく)の強い小説のほうがいい。この先楽しみな新人である。

光文社 小説宝石
2020年4月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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