コロナ議論で緊急重版 冷静に分析するための“武器”

レビュー

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ショック・ドクトリン (上)

『ショック・ドクトリン (上)』

著者
ナオミ・クライン [著]/幾島 幸子 [訳]/村上 由見子 [訳]
出版社
岩波書店
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784000234931
発売日
2011/09/09
価格
2,750円(税込)

書籍情報:openBD

ショック・ドクトリン (下)

『ショック・ドクトリン (下)』

著者
ナオミ・クライン [著]/幾島 幸子 [訳]/村上 由見子 [訳]
出版社
岩波書店
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784000234948
発売日
2011/09/09
価格
2,750円(税込)

書籍情報:openBD

コロナ拡大という“国難”に視界を曇らせないための一冊

[レビュアー] 倉本さおり(書評家、ライター)

 新型コロナウイルスの感染拡大による影響が人びとの生活を脅かす中、にわかに新聞各紙の見出しを飾るようになった「緊急事態宣言」の文言。有事に際して迅速に対処するというお題目のもと、あたかも国民の不安に乗じるように法改正を進めていく与党の態度には「火事場泥棒だ」との非難の声もあがっている。

 そんなキナ臭い現状に対する警鐘とも受け取れるのが、ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』の再評価だ。邦訳の刊行は2011年9月だが、今月に入って緊急重版が決定した。

 表題の「ショック・ドクトリン」とは、大惨事につけこんで実施される過激な市場原理主義改革のこと。ピノチェト政権下のチリに始まり、天安門事件やソ連崩壊、9・11やイラク戦争、スマトラ沖の津波被害といった事例を挙げ、惨事に便乗する経済改革がいかに国民を窮地に追いやってきたかを検証した原著は、07年にカナダで刊行されるや世界的ベストセラーに。

「邦訳版の刊行のタイミングがちょうど東日本大震災の年と重なったこともあり、この国でもリアルに受け止められたという実感がありました」(担当編集者)

 上下巻合わせて5000円を超えるにもかかわらず異例の売れ行きを見せていたが、岩波書店が注文買い切り制を採用していることもあり、想定した読者層におよそ行き渡ったところで品切れの状態が続いていたという。

 5年ぶりの重版のきっかけは新型コロナウイルス対策の特別措置法にまつわる議論からだった。“歴史は繰り返される。これは日本のショック・ドクトリンになる”―各メディアで引き合いに出されるや、問い合わせが殺到した。

「経済格差や医療格差、自己責任という言葉の使われ方……世界各国の現況を鑑みるに、コロナウイルスはいまの社会の中で脆くなった部分を狙い撃ちにしているような印象も受けるんです。こういうときにいちばん怖いのは人びとが思考停止に陥ること。本書はあくまで冷静に物事を分析するための武器になり得ると思っています」(同)

新潮社 週刊新潮
2020年3月26日花見月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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