【聞きたい。】半田カメラさん 『遥かな巨大仏 西日本の大仏たち』
[文] 三保谷浩輝
■恋から愛へ「巨」の魅力に迫る
大仏に恋した女性カメラマンが、2年前に刊行した『夢みる巨大仏 東日本の大仏たち』の続編となる本書をこのほど上梓。大仏の魅力に迫る旅が完結した。
「一冊出した時点ではまだ死ねないなと(笑)。これで肩の荷が下りた感じ」
きっかけは10年前、高い建造物が好きで見に行った牛久大仏(茨城、高さ120メートル)に一目惚れ。
「当時タレントさんのポートレート撮影の仕事が多かったのですが、大仏さまも魅力的な被写体だなと思って」通ううちに「大仏を作った人、管理する人たちへのリスペクトもわいてきて恋から愛に変わったみたい。私も大仏さまのことを伝えていけたらいいなと」。
これまで撮影した大仏は300尊以上。うち東日本編で70尊、西日本編で82尊と、タワーや建造物など「巨」なるものを紹介した。ちなみに大仏のベスト5は-。
本書の表紙になった「優しすぎる笑顔」の釈迦説法坐像(熊本、同38・5メートル)▽森の中に座る未完の不動明王大仏(広島、同6メートル)▽衝撃的癒やし系・布袋の大仏(愛知、同18メートル)▽「胎内で迷子になれる巨大仏」の東京湾観音(千葉、同56メートル)▽牛久大仏。
大仏の情報はネットやSNSなどでゲットするが、「あまり事前に調べちゃうと感動が薄まる気がする。行って『あった! すご~い』という感覚でいたいので調べないで行くと、(大仏の向きが)ド逆光でどうしよう~とか」。
使命感も芽生え、撮影のための延泊や、険しい山道との悪戦苦闘など「ほとんど根性ですね」の歳月。それも「なかには参拝者もいなくなって、寂れていく仏さまもいらっしゃる。そんな悲しいことがなくなるように興味を持ってもらい、足を運んでいただけたら」という大仏愛あればこそ。
「大仏さまは自分を知る鏡にもなる。後ろめたい気持ちがあると正面から目を見られなかったり、すがすがしい気持ちなら、やさしいお顔に見えてきたり」
参拝するのが楽しみなような、怖いような…。(書肆侃侃房・1800円+税)
三保谷浩輝
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【プロフィル】半田カメラ
はんだ・かめら 秋田県出身。平成8年、女子美術短大卒業後、カメラマンとして雑誌やWEBで活躍。大仏写真家の肩書も。