大きな危機に直面したとき“信用回復”に必要なことは

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地雷を踏むな

『地雷を踏むな』

著者
田中 優介 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784106108402
発売日
2019/12/16
価格
792円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

大きな危機に直面したとき“信用回復”に必要なことは

[レビュアー] 宮崎謙介(元衆議院議員)

 社会生活を営む中で、人間関係を遮断することはできない。物心がついたころから私たちは社会の一員として暮らしている。学校では友人や目上の人との関係性を学び、社会に出てからは取引先だけではなく、会社内の人間関係にも気を遣えなければ、たちまち村八分である。家庭も決して例外ではない。私が国会議員時代、常々思っていたのは、家庭環境が整っていない政治家は一流にはなれないということだ。「修身斉家治国平天下」という言葉がある。これは天下を治めるのは、まず自分の行いを正しくし、次に家庭を整え、次に国家を治めてからにすべきだということである。家庭環境を円滑に整えられない人に天下国家を語る資格はなく、政治などできるはずがない。

 誰しもが人間関係を円滑かつ良好にしたいと思うものである。しかし実際のところ、100%満足のいく人間関係を築けている人は少ないのではないだろうか。育ってきた環境が違うから好き嫌いは否めないわけで、夏がダメだったり、セロリが好きだったりすると、相性として合わない場合だってある。うっかり相手が望まない言動をとれば、たちまち関係性は悪化し、冷え切ってしまう。冷えるだけならまだ良いが、爆発して怒らせてしまうことだってある。できるだけそのような「地雷」を踏まないために、相手を理解したり、距離を上手にとったりして乗り越えていくのだ。つまり、人間関係を上手に構築するためには日頃の危機管理と、万が一の時の危機対応の2点が重要になってくる。

 私も4年前に大きな危機に直面した。日頃から人間関係には細心の注意を払って丁寧に慎重に信用を獲得し、「地盤・看板・カバン」なしの状態で国会議員となった。しかし、自らの過ちによって世間の皆様から大きなお叱りを受け、全てを失い地に堕ちた。その危機に瀕した際に私は正直に包み隠さず全てを吐露し謝罪し、一から出直した。禊(みそぎ)は一生だと今でも思いながら日々を過ごしている。そのお陰か、だんだんと明るい兆しが見えてきて、ビジネスでも仕事が増え、テレビでのお仕事もやらせていただいている。

 ここまでを私はこの本の「目次」だけを読んで書いてみた。そして全体を通して読んでみたのだが、まさに危機対処のエッセンスが全て詰まっている。成功する人間関係の構築法、また、危機を招いたときの対応の仕方、そして、信用を再び勝ち取るために何をしたら良いのか――本書を是非ご一読いただきたい。

新潮社 週刊新潮
2020年4月2日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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