役立つのに愉しい日本語の取説

レビュー

8
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段落論

『段落論』

著者
石黒圭 [著]
出版社
光文社
ジャンル
語学/日本語
ISBN
9784334044619
発売日
2020/02/19
価格
902円(税込)

書籍情報:openBD

役立つのに愉しい日本語の取説

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

『文章は接続詞で決まる』『「読む」技術』『日本語は「空気」が決める』『語彙力を鍛える』『大人のための言い換え力』『「予測」で読解に強くなる!』。石黒圭による日本語本は、新書に限ってもこれだけあって、でもワタシが書評の対象に選ぶのはこの『段落論』が初めて。今まで隠匿してたのは、読む・書く・話すを仕事にする者にとって、どれもがえらく役に立つ日本語のマニュアルだから。何を書くにせよ、石黒本から得られるアドバイスに従えば文も文章もレベルが上がってしまうゆえ、言語の迷宮を目指すワタシの場合、迷ったときには助言の逆を行けばちょうどいいほどです。一方、今度の新著は紹介しちゃおうと思い切ったのは、言葉を使うための取説としてのみならず、言葉を愉しむための読み物としても見事だから。なにしろ読んでる間にしょっちゅう頭に浮かんでくるのが、たとえば筒井康隆の『虚人たち』や「句点と読点」といった言語実験モノの小説やエッセイの傑作群。日本語学・日本語教育学の研究者の手になる、専門性と実用性とを兼ね備えた新書が娯楽性、というより先鋭的な享楽性まで孕んでる。こりゃちょっと奇跡だしニュースだしで、吹聴しないわけにはいきません。鋭敏なアナタならすでにお気づきのとおり、『段落論』というタイトルからしてアレの本歌取りだしね。あ、肝心の段落については触れられなかったので、その働きやありがたみくらいはわかっていただけるようにしておきました。

新潮社 週刊新潮
2020年4月2日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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