『自分を幸せにする働き方』
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「なんのために働いている?」を突きつめると仕事は楽しくなる
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『自分を幸せにする働き方』(張替一真 著、ぱる出版)の著者は、日本全国の中堅中小企業向け研修事業を行っている人物。
昨年、前著『自分を動かす習慣 80のヒント集』(ぱる出版)をご紹介したこともありますが、新刊である本書は、「仕事」がテーマとなっています。
日々繰り返し働くなかで、自信や誇りを失いつつある人がいることも残念ながら事実。
「なんのために働いているのか」という疑問に答えられない人も、決して少なくないのではないでしょうか?
そこで本書では、仕事の本質的な部分について考えなおしているわけです。
この本では「仕事」について、前向きに、そしてちょっと真剣に考えながら、「仕事」を少しでも楽しむために必要な「仕事をする為の目的」をつくるコツを紹介しています。(「この本を手にしてくれたあなたへ」より)
毎日、当たり前のように続けている「働く」ということを、さまざまな角度から考察した一冊。
きょうはCHAPTER 2「何のためにあなたは働いているのか?」に焦点を当て、「働くことの意味」について考えてみることにしましょう。
働く目的はなんですか?
「なんのために働いているのですか?」と問われたとしたら、どう答えるでしょうか? もしかしたら、返答に詰まってしまうかもしれません。
しかし働くにあたっては、必ずしも目的が必要だというわけではないのだと著者は言います。
いいかえれば、目的がなにもなかったとしても、働き続けることは可能なのです。
なお、「なぜ働くのか」について考えるタイミングは、仕事に対してなんらかのネガティブな感情が湧いてきたときではないでしょうか?
たとえば人間関係がうまくいかなかったり、思うような結果を出せなかったり、自分のせいではないことで叱られてしまったときなどに。
仕事をしていて疲れてくると、「なぜ」「辞めたい」「イヤだ」「私だけ」といった負の感情が芽生え、そこから「なんのために…」といった思考に至ってしまいがち。
「なんのために…」と考えること自体は悪いことではないものの、できれば仕事が好調なときや、いい結果を残しているときにこそ考えてみるべきだと著者。
そうすれば、「夢」「目的」「仕事で得られる価値」など、ポジティブな面が見えてくるからです。(38ページより)
なぜ、いまの仕事を選んだのか
こう聞かれたとき、「そんなものないよ! 一刻も早く辞めたい!」と感じるかたもいらっしゃるでしょう。しかし、その会社へ出向いて面接を受け、合格までしているのは誰あろう自分自身。
つまり、なんらかの理由があったからこそ、その会社で働きたいと思ったはずであるわけです。
「給与がいいから」「興味のある業界だったから」「福利厚生などの条件がよかったから」「大企業ならどこでもよかったから」など、その会社で働きたいと思った理由もさまざま。
いずれにしても、その会社を選んだ当時の自分と、いま会社を否定している自分とでは、別人といえるほどの違いがありそうです。
社会人になって経験を積み重ねた結果、学生のときには見えなかったことがどんどんクリアになっていくのですから、ある意味では当然のことです。
そのため、当時の自分が「よい」と思っていたものと、いまの自分の価値観との間に、大きなギャップが生まれている可能性があるということ。
今、会社に対してネガティブな感情を持っているかもしれませんね。しかし、社会人経験が長くなってきた今、ゼロだった自分が選んだものと現在の自分との間では、ミスマッチが起こっていてもおかしくないのです。(45ページより)
いいかえれば、それは自分自身が成長していることの証であると解釈することもできるのでしょう。(44ページより)
「働く」を本気で突きつめてみよう
現実問題として、「なぜ働くのか」についてじっくり考えたことがあるという人は多くないはず。それが悪いということではなく、「それで当然」なのだと著者は主張しています。
なにしろほとんどの人は、1日のうち8時間以上を仕事にあてているのです。通勤時間や身支度の時間なども加えれば、少なくとも10時間以上を仕事にとられていることになります。
しかも、そこに残業が加われば、気力や体力も衰えてしまうはず。そんな毎日だからこそ、働くことについて考える時間がとれなくても無理はないということ。
しかも40年以上も働くはずなのに、働くということの意味などについて勉強する機会はありませんし、教えてくれる場所や人もないのでは?
考えてみればおかしな話ではありますが、いずれにしてもそのように生きてきたのであれば、「働くことについて考える方法がわからない…」と悩むのは、むしろ普通のことだというわけです。
だからこそ、もしも楽しく働きたいと考えているのなら、改めて一度、「なぜ働くのか」「働くとはどういうことなのか」について考えてほしいと著者は記しています。
正しい答えがあるわけではないにせよ、それが楽しく働くためのヒントにつながるはずだから。(46ページより)
仕事が楽しくなるかどうかは自分次第
毎日忙しく過ごしていると忘れてしまいがちかもしれませんが、そもそも自分の人生の主人公は自分自身。
つまり、どんなふうに働き、どんな人生を送るのかも自分で決めていいわけです。
すべてを自分で設計できることが人生の醍醐味なのですから、できるだけよい方向に向かったほうが楽しくありませんか?
そして、よい方向へ向かう際には、自分が自分のリーダーになることが欠かせません。(49ページより)
ただし自分が自分のリーダーになる以上、自分で自分を律したり、自分を目的へと導いたりする必要があります。
そのため少し難しく感じるかもしれないものの、そうしていくことでどんどん成長していくものなのだと著者は訴えています。
ちなみに、「会社がもっとこうなれば」「あの人さえ、やさしくなってくれたら」など、さまざまな思いが頭に浮かぶこともあるに違いありません。
しかし、これは断言できますが、周囲に期待していても何も変わりません。何かを変えたいのであれば、自分が変わるしかないのです。
ですから、自分を変えることに集中してください。(48ページより)
「自分の人生の主人公は自分」なのだから、自分が自分のリーダーになり、働く時間も楽しみに変えてしまうことが大切だという考え方です。(48ページより)
構成も文章もきわめてシンプル。イラストも豊富に盛り込まれているので、肩肘を張ることなく楽に読み進めることができるはず。
働くことに迷いを感じているなら、手にとってみてはいかがでしょうか?
Photo: 印南敦史
Source: ぱる出版