『食堂のおばちゃん』シリーズなどで知られる作家が、最愛の母の認知症発症から自宅で看取るまでの18年間をつづったエッセー。変わりゆく母への戸惑いや葛藤など介護の様子だけでなく、京都旅行や家族の外食といった日常の風景も温かな筆致で描かれる。
一方で、母の生活機能が低下していく様子や気持ちを思いやれなかった後悔、反省も率直に記され、作家ならではの冷静な視点も。
二人三脚で過ごした母子の別れの瞬間は穏やかで感謝に満ちていた。大切な人との別れ、という特別な時間を自分はどう受け止めるのか、考えさせられる。(小学館・1200円+税)
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2020年4月5日 掲載
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