がむしゃらな努力より効率を考える。現役東大生の「ひとりでしない」独学法

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がむしゃらな努力より効率を考える。現役東大生の「ひとりでしない」独学法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

参考書をいっぱい買い、ノートをたくさん使って、鉛筆を何度も削らなければ勉強の結果が出ないーーそんな時代は終わりました。これからは、いかにスマホを駆使して効率的に勉強できるかどうかが問われる時代になりつつあるのです。

(中略)スマホ学習のすごいところは、勉強をする人それぞれ、つまり個人に最適化した形で実践できることです。(「はじめに」より)

こう主張する『東大式スマホ勉強術 いつでもどこでも効率的に学習する新時代の独学法』(西岡壱誠 著、文藝春秋)の著者は、東京大学4年生。

スマホを勉強に活用することで、東大に合格できたのだそうです。

がむしゃらにがんばって結果を出す「努力」の時代は終わったと断言しているのも、そんな実績があるから。

これからはより効率的な方法を考え、結果につながるような勉強をする必要があるというのです。

そして、そのための有効なツールが「スマホ」。スマホを活用すれば、より効率的で、より結果の出る勉強をすることができるということ。

受験生であれ社会人であれ、「独学したい」と考えている人は少なくないはず。ところが、結果的に挫折してしまう人が多いのも事実ではないでしょうか。

ひとりで勉強を続けるのは、それだけ難しいわけです。

でも、いまの時代には、ひとりで勉強する際には「スマホ」が大きな味方になってくれる。著者はそう主張するのです。

そんな考えに基づく本書のなかから、きょうは第4章「スマホの中に『仲間』を作る」を見てみましょう。

独学には限界があるという考え方に基づき、「ひとりで勉強するのをやめよう」と提案している項です。

独学には限界がある!?

独学術の本でありながら「ひとりで勉強するのをやめよう」というのは、なんだかおかしな話だとも思えます。

しかし著者によればそれは、「独学の前提になっている部分を発展的に解消しませんか?」という提案なのだそうです。

もちろん「独学の前提」は、ひとりでやらなければならないということです。

しかし、「ひとりで勉強しなければならない理由があるのだろうか」と著者は問いかけているのです。

多くの人と一緒に勉強でき、そのほうが楽に成果を上げることができるのなら、それはそれでいいことなのではないかと。

以前であれば、「一緒に勉強する仲間がいない」「経済的な理由で塾に通えない」などの理由から、ひとりで勉強しなければならないというような状況もあったかもしれません。

でも現代においては、同じ目標を持つ仲間を見つけること、つながって一緒に努力することは難しいものではないはず

周囲に一緒にがんばる人がいない状況だったとしても、スマホさえあれば仲間を見つけられる時代だということです。

2019年度に、沖縄県の離島から塾に行かずに東大合格した学生が一人います。 SNSで自分の勉強記録をアップして、他の東大志望の学生がどのように勉強しているかを知り、「スタディサプリ」の動画を見て勉強し、スマホをフル活用して合格したわけです。

彼は、「なぜ一人で合格できたのか」という質問に対して「自分は一人ではなかった。だから合格できた」と語っています。つまり、彼は既存の独学の概念を打ち破って東大に合格したというわけです。(122ページより)

これは一例ですが、同じようにスマホを活用し、「勉強をひとりでやらずに」志望校に合格する学生は多いのだそうです。

つまりこれからの時代は、独学といえども他の人たちと一緒にがんばることが可能だというわけです。(121ページより)

ひとりではモチベーションを維持できない

とはいえ反論もありそうです。

「そもそも勉強はひとりでやるものだ」

「仲間がいようがいまいが関係ないだろう」

というように。

しかし、そこには2つの間違いがあると著者は言います。

まずひとつは、もし他人に頼れるなら、あえて頼ったほうが独学の効果が期待できるということ。

もうひとつは、ひとりで戦うより、仲間と一緒に闘うほうが精神的に安定するということ。

所詮、人間は弱いもの。誰にもすぐにサボりたくなる側面があり、放っておけば記憶したことの97%も忘れてしまいます。

人間はそういう生き物なのだから、自分以外の他者にも頼るべきだという考え方。

自分ひとりだと難しいなら、一緒にがんばる仲間をつくって助け合えばいいというわけです。(123ページより)

「仲間」がいたほうが成績は上がる

自分一人よりも、仲間と共に切磋琢磨した方が結果が出るというのは、科学的に証明されています。

それは「ピア効果」と呼ばれ、同じ目的・目標を持つ仲間が近くにいるだけで目標達成のスピードが速くなり、学習効果も高くなるというのです。(124ページより)

つまり、ひとりでやるよりも、複数人でがんばったほうが効果が出るということ。

著者も自身の経験から、モチベーションは“個人の目的”よりも“集団の目的”においてより持続するものだと考えているのだといいます。

「自分が頭がよくなりたい」「自分が合格したい」というモチベーションだとしたら、途中で諦めても「まあ、いいか」となってしまいがち。

目標達成できないのは「自分だけ」だからです。

ところが、「他人のため」だとそうはいかないはず。自分以外のため、他人を背負っているからこそ、逃げられないということ。

「ここで諦めたら、一緒にがんばっている人に迷惑がかかる」というような気持ちで勉強していると、簡単には諦められなくなるわけです。

そして重要なポイントは、SNSを使えば仲間やライバルを簡単に見つけられるということ。

たとえば受けようとしている試験の名前をツイッターやインスタグラムで調べてみれば、その試験に向かって勉強している多くの仲間を見つけることが可能。

同じようにがんばっている人が、「勉強アカウント」という形で発信を行なっているわけです。

そのため、そうした人たちのアカウントをフォローするだけで、モチベーションは自然と上がっていくということ。

だから、スマホで仲間を見つければ、ひとりで勉強することの限界を超えられるのだと著者は訴えているのです。(124ページより)

以後は、仲間と勉強をするための方法を開設した「実践編」へと続くので、確実に実践できるはず。

もちろんそれ以前に、勉強をデータ化する方法、アウトプットを最大化する方法など、スマホを活用した「個人」としての勉強もわかりやすく解説されています。

勉強の精度を高めるために、活用してみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

Source: 文藝春秋

メディアジーン lifehacker
2020年4月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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