ライフハッカーの書評家が、約8年書き続けて身につけた「要約」のコツ

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書評の仕事

『書評の仕事』

著者
印南 敦史 [著]
出版社
ワニブックス
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784847066399
発売日
2020/04/08
価格
913円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

ライフハッカーの書評家が、約8年書き続けて身につけた「要約」のコツ

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

僕は2012年8月26日から、日曜祝日を除くほぼ毎日、ライフハッカーで書評を書き続けてきました。つまり、今年の夏で8年目に突入することになります。

まさかここまで続くとは思ってもいませんでしたし、そもそも自分が書評家と呼ばれるようになるなんて考えたこともなかったので、なんだか不思議な気分ではあります。

それはともかく、きょうはそんな僕の約8年の集大成というべき新刊をご紹介させていただきたいと思います。『書評の仕事』(印南敦史 著、ワニブックスPLUS新書)がそれ。

書評家になるまでのこと、なってからのこと、書評を書くときの考え方、その他さまざまな思いを綴った新書です。

ところで、もしかしたら「別に書評なんか書かないから関係ない」と思われるかたもいらっしゃるかもしれません。

しかし、必ずしもそうではないと個人的には考えています。

実際のところ、書評に関するあれこれは、意外と他の多くのことに応用できるものでもあります。なぜなら書評を書くにあたっては、「読みかた」「書きかた」「選びかた」「接しかた」「考えかた」など、さまざまなことが絡んでくるから。

それらはすべて、書評家以外のあらゆる仕事にとっても重要なファクターとなるはずです。(「はじめに」より)

たとえば書評を書く際に必要な“まとめる力”は、簡潔であることが必要な企画書作成などにも活かせるはず

それは一例ですが、他にもできることは少なくないのです。

そこできょうは、第3章「年500冊の書評から得た技術」のなかから、「要約」についての考え方と役立つコツをご紹介したいと思います。

書評を書くうえで重要な「要約」は、さまざまなビジネスの現場で活用できるものでもあるからです。

「3ステップ・チェック」

仕事をする際に必要なのは、膨大な資料のなかから“その仕事に必要なもの”だけを取捨選択すること

まず最初に、それらを理解したうえで実務に臨む必要があるわけです。

たとえば分厚い資料が目の前に置かれたとしたら、重要なのはその内容をなるべく短時間で理解することとなるでしょう。

もちろん簡単なことではありませんが、そんなときには日常の読書習慣を通じて無意識のうちに培ってきたであろう「要約力」を応用すればいいのです。

ちなみに僕は、本と向き合うときにはまず目次をチェックして、自分に必要な箇所を見つけ出すべきだと主張しています。

狙い目をピンポイントに定め、必要なところだけを読めばいいという考え方。

すべて読むことを否定したいという意味ではなく、しかし時間が限られているときには、そうした読みかたが有効なのです。

そしてこの手法は、仕事の資料の内容を短時間で理解することにも応用できます。僕は「3ステップ・チェック」と呼んでいるのですが、おおまかな流れは次のような感じです。

1:目次をチェックし、全体の流れを把握する

2:取り急ぎ必要なページを集中的に読み込む

3:最後のまとめ部分を確認する

(155ページより)

通常、資料の前半は「市場の現状」「問題」などの説明にあてられていることが多いはず。

それらを踏まえたうえで、「では、どうやって問題を解決し、よりよい結果につなげるか」というような流れになっているわけです。

とはいえ実際のところ、前半に書かれているそのようなことが「わかりきった、当たり前のこと」であるというケースも少なくありません。

だとすれば、そこを飛ばしてもまず問題はないのです。仮にわからなくなったり混乱したとしても、飛ばした部分に戻ってみればいいだけ。

でも経験則でいうと、そうなることは現実的にほとんどないと思います。

つまり3ステップ・チェックを使って無駄を省けば、仕事の効率も高まっていくはずだということです。(154ページより)

「1→3ショートカット」

効率的にビジネスを進めるためには、「要点」を短時間でつかむスキルが必要。だからこそ、要約力をつけておくべきだということです。

なんとなく難しそうだと思われるかも知れませんが、文章や話の構造が理解できていれば、それは意外にたやすいことでもあります。

重要なのは、「最初」と「最後」に焦点を合わせること。企画書にもプレゼンテーション(用の資料)にも一定の“型”があるので、そこを理解していればいいということです。

1:問題提起→2:根拠→3:結論 (157ページより)

大まかではありますが、企画書やプレゼンテーション、またはビジネス書のパラグラフ(段落)などは、多くの場合、このような構造になっています。

まず問題点を指摘し、「それを解決するためにはどうすべきか」と問いかけてくるのが1。次いで2で展開されるのは、「なぜ、そういう問題が起こるのか」「背景にはなにがあるのか」などバックグラウンドに関する解説。

そして3で、問題を解決するための方法=結論が提示されることになるのです。

ということは極端な話、根拠などを解説している2を飛び越えて「1問題提起→3結論」とショートカットしたとしても、おおまかな話の要点はつかめるはずです。

ビジネスの現場では必然的に“速さ”が求められるため、たとえば複数人で資料を読み合わせているときに、自分だけ「理解できない…」と遅れをとるわけにはいきません。

「おおまかにでも」全体像をつかまなければならないのです。だからこそ、「1→3ショートカット」を活用することに意味があるのです。

少なくともそうすれば、遅れをとることはなくなるのですから。

その段階ですべてを完璧に理解することは難しいでしょうが、細かい部分の確認は、あとから時間をかけて行えばいいわけです。

まずはパパッと骨格を組み立て、あとから頑丈に補強するというようなイメージです。(156ページより)

たとえばこのように、「本を読んで書評を書く」という作業を繰り返してきたなかで得たコツなども盛り込んであります。

また、その一方では当然ながら“読みかた”“書きかた”などについても解説。さらには、「書評家としての日常」「書評家の“収支”」などプライベートにまつわる話題、ヒップホップなど音楽に関するトピックスも満載です。

書評に関連するさまざまなことに触れているので、読み物としても楽しんでいただけると思います。ぜひとも手にとってみてください。

Photo: 印南敦史

Source: ワニブックスPLUS新書

メディアジーン lifehacker
2020年4月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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