「障がい」って、なんだか怖い、大変そう、関わりたくない……そう思っていた奥山佳恵さんがダウン症の息子と暮らしてわかったこと

レビュー

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障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。

『障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。』

著者
姫路 まさのり [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103532613
発売日
2020/03/17
価格
1,500円(税込)

書籍情報:openBD

この子らで変わる世の中のために

[レビュアー] 奥山佳恵(タレント)


「できることをわかろう」とする企業の姿勢が嬉しかった(※画像はイメージ)

奥山佳恵・評「この子らで変わる世の中のために」

障がい者の働き方や彼らを受け入れ成功する企業を紹介したノンフィクション『障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ』が刊行。本作を読んだタレントの奥山佳恵さんが自身の体験を交えながら、障がい者と向き合うための心構えや世の中に期待する未来像を語った。

 ***

『ダウン症って不幸ですか?』という本を、ダウン症となんら関わりのない生活を送っている姫路まさのりさんが出版してくださった時、こんな方もいらっしゃるのだなと本当に嬉しく思った。ダウン症のある次男と暮らしている私以上に、ダウン症のある人のことを多面的な角度から見つめ、よりそってくれている本だったから。

 その一冊の存在でじゅうぶん感動していたところに、さらに上回る本がこの『障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。』でした。障がいのある人が働いて、自立できるだけの給料を払えている企業、ソーシャルファームを丁寧に紹介しているこの本は、本当は誰にとっても大事な「お金」の話を、真正面から考えさせてくれるのです。姫路さんの愛情ってどこまで深いのでしょうか。

「障がい」という言葉を聞くと、ほとんどの人は身構えてしまうと思う。なんだか怖いし、できたら関わりたくない。大変そうだね、と他人事。ダウン症のある次男を授かる前の私自身がそうでした。よくわからないから不安で、距離を置いていた気がする。

 でも、障がいのある子が我が子となり、距離をおくどころか濃厚に接する毎日を送ることが現実となって初めて私が感じたのは「あれ? これ、おんなじ子育て」だということ。知ってみると大したことない。もっというと、大差がない。事実、我が家においては健常者と言われている長男の子育ての方が、今でも苦労をしています(笑)。障がいを恐れることなかれ。同じ、個性がある人間にすぎません。今では心からそう言えます。そして、それは決して特別なことでもない。健常者であっても、ゆっくりと時間をかけて老いを重ね、できないことが増えていく、というほとんどの人が逃れられない現実もあります。

 その意味で、姫路さんがこの本の中でも触れていた「精神を病むのは他人事ではなく、誰にでも起こりうること」であり「精神障がい者と健常者は『紙一重』ではなく『表裏一体』だ」というお言葉にも深くうなずきました。

 次男はまだ8歳。この春で小学三年生。まだ字を書くことができないなど、できないことの方が多い生徒ではありますが、同じ地域に住む子どもたちの中で、当たり前に存在していてほしいという思いから通常級へと通っています。私たち親が懸念していた以上にクラスのお友達は、次男をあるがままに受け入れてくれました。子どもたちは幼ければ幼いほど「障がい」という概念がありません。次男が通っている学校に行くたび、理想の社会の縮図がここにあるなといつも思います。「できてもいい、できなくてもいい」と思いあえることは、誰もがゆっくりといろんなことができなくなる現実を思えば、みなが生きやすくなる。息をしやすくなる世の中になる。

 そんな思いが根底に深くあるぶん、この本の中の「できることをわかろう」とする企業の姿勢が嬉しかった。私たちはロボットではなく生身の、それぞれ違った形をした、生きている人間です。できることは人それぞれ。形が違うならその違いを生かせばいい。テストの点数だけで人をジャッジして仕分けることは合理的かもしれませんが、「あなたはどんな形をしていて、どんなことが得意ですか」と「人をわかろう」とする、この企業のような姿勢をみんなが持てたら、世の中は変わりますね。得意なことを分担して、誰かに喜ばれ、役に立てたことに喜び、賃金をいただく。それが「働く」ということの定義なんですよね。「人が動く」と書いて「働く」。幸せになるために生まれてきたのだから、動くということは喜びに満ちたものであってほしい。

 長男にも次男にも、それぞれにあった「働く場所」を見つけて人生を歩んでいってもらいたい。そう思いながら子育てをしていますが、障がいのある次男にはどこか、まだ幼い、という点もあり、あえて考えないようにしていたところがあったかもしれない。それを姫路さんがまた揺さぶってくれました。

 次男が変わる、のではなく次男で変わる世の中になるために、「こんな個性を持った子がいます」ということを私はこれからも自信を持って多くの方に伝えていこう。次男を丸ごと受け止めてくれたクラスメイトが存在しているように、世の中みんなに受け入れてもらうために。

 この本で紹介されていた言葉、「この子らを世の光に」の通りに。

 こんなステキな個性を持った子が、ここにいますよ!

新潮社 波
2020年4月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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