沈没船から宝物を引き揚げろ!? 深海で繰り広げられる迫真の冒険活劇

レビュー

3
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ダーク・ブルー

『ダーク・ブルー』

著者
真保 裕一 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784065190685
発売日
2020/03/25
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

沈没船から宝物を引き揚げろ!? 深海で繰り広げられる迫真の冒険活劇

[レビュアー] 香山二三郎(コラムニスト)

 ミステリーを中心に多彩な作風を誇る真保裕一。その主軸はデビュー作『連鎖』を始めとするディック・フランシス系のハードボイルドものだが、真保ファンの中には、巨大ダムを占拠したテロ集団に発電所職員が立ち向かう『ホワイトアウト』をベストに挙げる人も多いかも。

 本書は久方ぶりにその『ホワイトアウト』の世界を甦らせた冒険活劇である。ただし舞台は山奥から転じて海。それも光の届かぬ深海だ。

 大畑夏海は日本海洋科学機関(JAOTEC)の有人潜水調査船りゅうじん6500を操縦する女性潜航士。七月、栄央大学の天才学者・奈良橋俊彦が開発した新型ロボットアームの検証実験のため、派遣潜航士として奈良橋らとともに支援母船のさがみに乗り込むことに。

 さがみは太平洋西域のフィリピン海盆へと順調に航行を続けるが、ある日、開発チームの備品が紛失。それがきっかけで潜航チームとの間に波紋が生じる。さらにはベテラン潜航士・滝山省吾の作業服も消え謎は深まるが、そんなとき発煙筒の煙を上げている密漁船らしき船を発見。江浜安久船長は海の掟を守って、救いの手を差しのべるのだが……。

 深海活劇だからといって、のっけから潜るわけではない。『ホワイトアウト』と同様、まずは武装集団による襲撃とさがみが占拠されるありさまがスリリングに描かれる。謎の男たちはただの海賊ではなく、自国の民族独立を目論む一派で、そのために必要な宝物を沈没船から引き揚げろというのだ! 何かと高圧的で発砲も辞さないシージャックと暴力に屈する乗組員たち。舞台劇を髣髴させる迫真の心理描写に注目だ。

 そして夏海がシージャック犯の一人と組んで深海へおもむく後半。沈没船は無事発見できるのか、そして宝物の回収は。著者はジュール・ヴェルヌもびっくりの道具立てと演出を駆使してページを繰る手を止めさせない。これぞ真保裕一の真骨頂。

新潮社 週刊新潮
2020年4月16日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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