<東北の本棚>地図で「地元トリビア」

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宮城のトリセツ

『宮城のトリセツ』

著者
昭文社 旅行ガイドブック 編集部 [編]
出版社
昭文社
ISBN
9784398148049
発売日
2020/02/28
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>地図で「地元トリビア」

[レビュアー] 河北新報

 各県の地理や歴史をひもとく昭文社の「トリセツ」シリーズに、東北から初登場した。「地図で読み解く初耳秘話」をコンセプトに、地元通になるには欠かせない教養を豊富な図録と共に紹介した。
 全4章。地図の出版社らしく、交通網の成り立ちを盛り込んだ第2章は興味深い。旧奥州街道は、仙台市内の街道沿いの町名をその由来と共に詳述している。
 旧街道に当たる国分町通と大町の交差点に位置する「芭蕉(ばしょう)の辻(つじ)」は、仙台藩祖伊達政宗が城下町造営の起点と位置付けた重要地点だった。ミニコラムで、名前の由来を諸説挙げた。松尾芭蕉とは何の関係もないことが小さな驚き。
 仙台市の通称「杜の都」。本書によれば定禅寺通のケヤキ並木や青葉山から名付けられたわけではなく、町割りと武士の暮らしに関係していた。
 舟運を支えたのが、岩手、宮城を縦貫して流れる北上川。元は暴れ川として人々を困らせたが、政宗が指揮した改修で、米の生産、江戸への積み出しを飛躍させる重要インフラに生まれ変わった。
 これだけの大河川が難工事の末に「新北上川」「旧北上川」に分かれ、二つの河口から太平洋に注ぐ。先人の偉大さを改めて知る。
 三陸を襲ってきた津波の歴史、東日本大震災後の復興の姿もデータと共に伝える。
 昭文社03(3556)8123=1540円。

河北新報
2020年4月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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