近代日本の外交史料を読む 熊本史雄著

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近代日本の外交史料を読む

『近代日本の外交史料を読む』

著者
熊本 史雄 [著]
出版社
ミネルヴァ書房
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784623087891
発売日
2020/03/02
価格
5,500円(税込)

書籍情報:openBD

近代日本の外交史料を読む 熊本史雄著

[レビュアー] 加藤聖文(歴史学者・国文学研究資料館准教授)

 ここのところ毎年のように公文書をめぐる問題が社会を騒がしている。お陰で誰もが大なり小なり「公文書」に関心を持つようになった。

 とはいえ、実際の公文書はどのようなものか、よく分からないのが正直なところ。

 本書は、外務省が戦前に作成した公文書を俎上(そじょう)に載せ、一般的には注目されない文書の書式や種類を綿密に読み解きつつ、外務省の意思決定のメカニズムを明らかにする。

 例えば、真珠湾攻撃の騙(だま)し討ちと悪評が高い対米開戦通告の遅延――通説では在米大使館の「怠慢」とされているが、外務省本省から大使館への送信文書に記載の電報番号と送信時間を検証すると、当時の通信技術上の問題(1回に送信できる文字数に限度)を利用して、本省が意図的に発信を遅延していた疑いが浮かび上がってくる。

 松本清張の推理小説の素材となるような、いろいろな仕掛けが公文書には仕込まれていて、その謎解きも楽しい。

 著者も入門者から研究者にいたる幅広い層を意識して執筆しており、公文書初心者にとっても満足できる内容といえよう。(ミネルヴァ書房、5000円)

読売新聞
2020年4月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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