ユニークな科学者たちの“ココロの部分”

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科学の最前線を切りひらく!

『科学の最前線を切りひらく!』

著者
川端 裕人 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784480683724
発売日
2020/03/09
価格
1,034円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

ユニークな科学者たちの“ココロの部分”

[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)

 日常の行動が制限されるとストレスがたまりがちだ。そんなときこそ生活から離れたところを見て気分転換をしたい。

 川端裕人がナショナルジオグラフィック日本版の公式サイトに連載しているインタビューがおもしろい。それぞれの分野で独自性のある研究をしている科学者に、研究のキモの部分を語ってもらう。ただ知識をまとめるのではなく、その人の興味や意欲といったココロの部分が描かれている。科学はちょっと苦手な人も、興味につき動かされてがむしゃらに進む人を眺めて共感することはできるし、人間の可能性を感じるのは気分がいい。

 そのシリーズから精選された6本が読めるのが、『科学の最前線を切りひらく!』。冒頭の宮下哲人の話にまず圧倒される。子どもの頃からアマチュアの恐竜研究家だった宮下は、化石の骨の同定(どの恐竜のどの部分かを決める)に際し、斯界の第一人者であるカナダのカリー博士にメールで意見をあおいだ。驚くことに博士は返事をくれ、しかも「君の同定で合っている」という内容。宮下は高校1年生でカナダに渡り、彼に弟子入りしてしまう。情熱が正しく結実していくさまを、ぜひ本書でご確認ください。

 テレビ番組「又吉直樹のヘウレーカ!」に出演して話題になった、気象庁の研究官であり「雲を愛する技術」の伝道師、荒木健太郎も登場する。現実世界がバリアだらけでも、脳内世界は無限です。

新潮社 週刊新潮
2020年4月23日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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