坂上しのぶ著「ジェイムズ・リー・バイヤーズ 刹那の美」

レビュー

4
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ジェイムズ・リー・バイヤーズ 刹那の美

『ジェイムズ・リー・バイヤーズ 刹那の美』

著者
坂上しのぶ [著]
出版社
青幻舎
ISBN
9784861527685
発売日
2020/01/25
価格
4,180円(税込)

書籍情報:openBD

坂上しのぶ著「ジェイムズ・リー・バイヤーズ 刹那の美」

[レビュアー] 鈴木洋仁(社会学者・東洋大研究助手)

 京都・相国寺の縁側に並ぶ60メートルの白い紙は、蛇のように折られ、黒いクレヨンで1本の線が引かれている。

 1964年6月21日日曜日の夕方、2時間だけ展示されたこの作品は、ジェイムズ・リー・バイヤーズという当時30代の米国人芸術家による。

 その6年ほど前に来日し、約10年を過ごした彼の足跡を美術史家が丹念に追った。

 彼は、決まった形よりも、作者のパフォーマンスと共に演じる芸術を世界各地で見せた。あっという間に過ぎ二度と繰りかえせない美しさは、死後20年以上を経ても残る。

 作品の底には、日本で感じたことや、一期一会という茶道の考えが流れている。

 英語教師として生計を立てながら7回も帰米したため、CIAのスパイと噂(うわさ)される。金に困るのに散財し、払いを支援者に回す。謎めいた美の異端者を身近に思える本書は上品なミステリーであるし、本の作りを含めた上質の現代アートと言える。(青幻舎、3800円)評・鈴木洋仁

読売新聞
2020年4月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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