「人口爆発」は神話にすぎない 「老いて縮む社会」に必読の一冊

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2050年 世界人口大減少

『2050年 世界人口大減少』

著者
ダリル・ブリッカー [著]/ジョン・イビットソン [著]/倉田 幸信 [訳]/河合 雅司 [解説]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784163911380
発売日
2020/02/24
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

「人口爆発」は神話にすぎない 「老いて縮む社会」に必読の一冊

[レビュアー] 窪田順生(ノンフィクション作家)

 世界中で猛威を振るう新型コロナウィルスに「バイオテロ説」が囁かれている。実際、アメリカ人の3分の1が「人工的につくられたもの」だと考えているとする世論調査もある。内容としては、中国が西側諸国にダメージを与えるためというストーリーが一般的だが、「人口増加を緩和させるため」なる説も散見する。今の調子で世界の人口が増え続ければ、やがて食糧やエネルギーの争奪戦に至り環境破壊が進んでしまうので、何者かが人類の「間引き」を図ったというのだ。失笑するようなトンデモ話だと思われることだろうが、この手の「間引き論」は世界ではわりとメジャーで、小説や映画の題材になっている。

 世界的ベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』で知られる米作家ダン・ブラウンの『インフェルノ』では、人類の未来のためには人口を半減させなくてはいけないとバイオテロを計画する大富豪が登場する。また、世界興行収入歴代1位に輝く映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』も、宇宙の平和のために「生命体の半分を殲滅」することに執念を燃やす悪役と、スーパーヒーローたちの戦いを描いている。つまり、「人口爆発」とは世界共通の「不安」なのだ。しかし、もしその「不安」がとんでもない勘違いだったとしたらどうか。つまり、これから人類は爆発的に増えていくのではなく、急速に減少に転じていくとしたら――。本書は、我々が無条件で信じ込んでいる「人口は増え続ける」というのが実は根拠のない「神話」だということを、最新の人口統計や人口動態調査、そして世界中のフィールドワークによって浮かび上がらせている。

 例えば、「途上国は人口が増える」というのは、「貧乏子沢山」と言い習わす我々の中でもなんとなく常識化しているが、現実は一部の途上国で少子化が始まっている。背景にあるのは、都市化と女性の教育だ。農村部では子供は労働力なので多い方がいいが、都市生活者にとっては食費、学費など支出の方が多くなる。そこに加えて、女性の社会進出が進むと、どうしても子供がキャリアの妨げになってしまうので、貧しい途上国でも1人や2人しか子供をもうけない夫婦が増えてきているのだ。

 本書の分析では、世界の人口は2050年をピークに減少に転じて、もう二度と増加しないという。外出自粛で都市が閑散としているが、あれが「日常風景」になるのだ。世界で最初に「老いて縮む社会」を経験する日本人ならば読んでおいて損はない良書である。

新潮社 週刊新潮
2020年4月30日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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