『教育は何を評価してきたのか』
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教育は役立たずを量産してきたのか
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
令和にまで至るニッポンの教育の右往左往を研究者が解きほぐしてくれるのが『教育は何を評価してきたのか』。でも、この題を見てから、あとがきを読み終えるまで脳裏をよぎる顔また顔があって、それはこの国の政権の中枢の面々でした。
たとえば、不出来ゆえ家庭教師に定規で頭を叩かれる小学生にして、“必修の政治学の授業に一度も出席せず単位を取れなかったのに卒業してた”と母校・成蹊の恩師に回顧される大学生でもあった総理65歳。
たとえば、灘中・灘高→東大法学部→経産省コースの受験エリートにして、チンケな布マスクを460億かけて全世帯に配ろうとか、星野源に押しかけ共演する動画を流そうとか進言したらしい秘書官45歳。
この新書の切り口は、教育の場で児童生徒学生が求められてきた能力・態度・資質という3点で、この観点からお偉いサンたちを眺めてみると、能力はなかったり無駄遣いしてたり、態度は真摯の対極にあって、資質は疑われるばかり。教育の失敗の実例集だもの。
そういう上級国民が緊急事態宣言とやらを出し、下級国民にもカネばら撒くぞと騒ぎ出すタイミングで読んだせいで、この書評まで政治寄りになったら著者の本田由紀に申しわけない。そう思いながら終章までページを繰ってきたら、おお、本田自らが大胆かつ的確に政治を批判してる!
考えてみりゃ教育ってのは優れて政治であり、優れて国家であり。今こそ読むべき憂国の書、でした。