職場の「モチベーション下げマン」に対処するための3つの方法

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モチベーション下げマンとの戦い方

『モチベーション下げマンとの戦い方』

著者
西野一輝 [著]
出版社
朝日新聞出版
ISBN
9784022950659
発売日
2020/03/13
価格
869円(税込)

職場の「モチベーション下げマン」に対処するための3つの方法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

最初はやる気に満ち満ちていたにもかかわらず、他者のちょっとしたひとことや振る舞い、ぞんざいな態度でモチベーションが一気に失せてしまったーー。

そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか?

経営・組織戦略コンサルタントである『モチベーション下げマンとの戦い方』(西野一輝 著、朝日新書)の著者は、そういった“モチベーションを下げてくる人・要因”のことを「モチベーション下げマン」と呼んでいます。

ちなみに“マン”は、必ずしも男性だけを指すわけではないのだとか。

一度しぼんでしまったモチベーションを立てなおし、前向きさを取り戻すのはなかなか困難。

しかもモチベーションが下がっているときは、自信を失ってしまいがちで、そんな状態が慢性化する可能性すらあります

それだけ人は繊細だということなのでしょう。

そこでこの本では、そんなモチベーション下げマンに出会ってしまったらどうしたらいいのか、そして再びやる気を取り戻すにはどうしたらいいのかを、さまざまな人・シーンを想定し対策を紹介していきます。(「まえがき」より)

きょうはそのなかから、第2章「やる気を失わせる『この一言』への反論術!」に焦点を当ててみたいと思います。

「○○さんがこう言っていたよ」

「自分は相手の気持ちがわかる」とか、「自分は相手のことをわかってあげようと努力している」と勘違いしているモチベーション下げマン(以下:MSM)は少なくないもの。

しかし、彼らの過大な自己評価は今後も変わらないだろうと著者は記しています。

「わかってないのですよ」と理解させるのは、相当に困難な話だから。

変わらないのだとしたら、まずすべきは自分のモチベーションの下げ幅を最低限にするために、極力その人とのコミュニケーションを減らすこと。

次第に少しずつ、距離感を広げていくわけです。

さて、どんなふうに距離を取っていくかというと、闇雲に冷たい態度をとるのはおすすめしません。そこで、「自分は鈍感で、あなたが話している意味がよくわかりません」 と言うのです。つまり、MSMの発言が高尚であって、自分にはわからないように振る舞うのです。

MSMも話していることが伝わらないとなれば、おもしろくなくなり心の距離を置く可能性があります。 仮にMSMの発言に敏感に反応すると、それが嬉しくて離れてくれません。それどころか、さらに発言を繰り返す、厄介な状態が続く可能性があります。(55ページより)

人は発言する場合、相手の反応に期待するものです。

そのため、相手から「この人には言いやすい」「この人は応えてくれる」と思われると、ターゲットになりやすいと著者は言うのです。

たとえば、自分が経理部に所属していたとしましょう。

そして、他部署のある人物が「総務部の後輩が、君のことを『計算ミスが多い』と言っていたよ」と、経理の仕事に適していないと言いたげなコメントをしてきたとします。

そんなとき、「どんな場面で計算ミスが多いと感じたのですか? もしかして、経理失格と言いたいのですか?」などと感情的な質問をしてしまったりしたら、MSMの思うツボ。

それが、モチベーションがさらに下がるコメントにつながっていくかもしれないからです。

適切なのは、「どうですかね」などと“気にしていない感じ”を示すこと

そうすればMSMはつまらない気持ちになるため、「こいつに言っても無駄」だと離れていくはずだというのです。

著者自身、過去に同じような対応をすることで、相手に距離を置いてもらった経験があるそうです。

とはいえ、もしMSMの指摘を真摯に受け止めた結果、「改善すべきかもしれない」と思えたのであれば、自己評価を試みることも大切

同僚など、自分が本当に信頼できる人に「自分って計算ミスが多いかな?」などと聞いてみるのもいいかもしれません。(54ページより)

「前例はあるの?」

「前例がない」と反対意見を述べることでモチベーションを下げる人も、決して少なくはありません。

しかし、いまの時代、前例に基づいて意思決定をするということは大きな成功につながりにくいはず。

二番煎じと見られることもあるため、多くの場合は競合に負けていくことになるわけです。

プライスリーダーになれる人とは、古い言葉で言うと、ブルーオーシャンに入っていける人でもあります。 とすると前例がないと反対してくる人は、その人の役割意識として反対している場合があります。

「会社として慎重に考えなさい」という意味合いで、象徴的な「前例がない」というネガティブな発言をしているのです。(64~65ページより)

「前例がない」と言われたときに大切なのは、「だからやるんじゃないですか」ということを相手にさらっと返すこと。

その際にはまず、反対意見をぶつけなければいけないその相手のことを立ててあげると効果的だそうです。

「その発言はごもっともです」と受け止め、価値を提示しながら「だからこそやりましょう」と言い切ってみるべきだというのです。

相手の発言をまともに受け止め、モチベーションを下げてしまうのはもったいないこと。

そこで、自分の意思を貫くかたちで阻止してみようという考え方です。(64ページより)

「これってなんの意味があるんですか?」

部下から「なんでこんなことをしなきゃいけないんですか?」「これをやってなんの意味があるんですか?」などと言われたことがある上司もいるはずです。

「そんなことまで教えなくてはならないのか」と感じることもあるでしょうが、そういったときには、どうしたらいいのでしょうか?

もちろん感情的になる必要はありません。 仕事の意味は伝えないとわからない世の中になったことを受け入れて、面倒くさがらずに意味と理由を丁寧に伝えてあげましょう。

さらにプラスアルファの対策として「それをやるのがあなたのためだと思うから」と言ってあげるのです。(83ページより)

「なんとなく自分にプラスになる」と思えるくらいの納得感を伝えるだけでも、効果が期待できるというのです。(81ページより)

なお著者によれば、モチベーションが下がる原因は他者だけにあるものではないそうです。つまり、自分自身のなかにも「モチベーション下げマン」は存在するということ。

そんな自分のなかにひそむモチベーション下げマンの対処法をも明かした本書は、さまざまな「モチベーション下げ要因」に対処するために役立ってくれるかもしれません。

Photo: 印南敦史

Source: 朝日新書

メディアジーン lifehacker
2020年4月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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