『裸の天才画家 田中一村』大野芳著
[レビュアー] 産経新聞社
生前、ほとんど知られることがなかった孤高の日本画家、田中一村(いっそん)(1908〜1977年)。中央画壇に背を向け、50歳で南国の奄美大島に移住。島の植物や鳥などを鮮やかに描き出した。お金がなくなれば紬(つむぎ)工場で働き、ほぼ自給自足しながら制作に打ち込んだ。死後、遺作展が開催されたことでブームが巻き起こり、美術館まで建設された。
なぜ、世に出ることになったのか。そこには異端画家と関わった支援者と作品に吸い寄せられて集まった人たちの努力があった。脇役の人生やエピソードをつづることで画家の素顔が浮かび上がってくる。(平凡社・2400円+税)