『発達障害かも? という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』
- 著者
- 姫野桂 [著]
- 出版社
- ディスカヴァー・トゥエンティワン
- ISBN
- 9784799326008
- 発売日
- 2020/04/10
- 価格
- 1,430円(税込)
忘れ物が多い、優先順位をつけられない。発達障害かも?という人のハック術
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
発達障害に悩む方は、決して少なくないのではないでしょうか?
『発達障害かも? という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(姫野 桂 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者も、2018年の春に発達障害と診断されたのだそうです。
発達障害には、主に、
・衝動性や不注意の多いADHD(注意欠如・多動性障害)
・コミュニケーションに困難が生じ、独特なこだわりを持ち反復行動を好むASD(自閉症スペクトラム)
・知的な問題はないのに読み書きや計算が難しいSLD(限局性学習障害)
の3つがあります(そのほか、チック症や吃音症も発達障害の一種に含まれます)。(「はじめに」より)
これらは生まれつきの脳の特性であり、「得意なことと苦手なことの差が激しい」という特徴があるといいます。
なお、ASDが濃い人がいればADHDが濃い人もいるなど、特性の濃度は人それぞれ。
著者の場合は、繰り上がり・繰り下がりのある暗算や%の計算がぱっとできない算数のSLDがもっとも顕著で、その次に不注意優勢のADHDの特性があり、ASDは傾向がある程度なのだとか。
ちなみに本書は、発達障害を持つ人に向けた「ハックの本」だそう。
「発達ハック」=「苦手なことを工夫で乗り越えること」を目的として、たとえば「書類のケアレスミス対策」「電話対応をスムーズにする方法」など、日常生活に役立てることのできる多くのハックを紹介しているわけです。
きょうは第2章「『仕事』をやりやすくするハック」のなかから、いくつかを抜き出してみたいと思います。
忘れ物
忘れ物が多い。 何度も取りに帰ったりして家を出るのが遅れてしまう。
文具を忘れて出先で購入したりして余計な出費がかさんでしまう。
[Hack!]
チェックリストをつくって、玄関に貼っておこう
忘れ物が多い人は、外出先に持っていくモノのチェックリストをつくって、玄関に貼っておくといいそう。
出発前に必ず、漏れがないか確認するわけです。
なお、携帯、定期券、ハンカチ、IDカードなど毎日必ず持っていくモノは、1つのかごにまとめておくと便利だといいます。
[Point!]
紙のチェックリスト以外にも、書き足したり消したりしやすい小さなホワイトボードも利用価値あり。
100均で購入できるので、お金もかかりません。(以上49ページより)
優先順位
それぞれ違う人から仕事を頼まれると、
優先順位をつけられなくなる。
[Hack!]
仕事の内容と期限、重要度を書いた一覧表をつくる
いま自分が抱えている業務の内容と期限、重要度を一覧表に。これは、仕事を依頼してくる人の指示書の役割も果たしてくれるそうです。
これをつくっておけば、自分のなかで仕事を整理するのに役立つわけです。
また、仕事の依頼者に見せて自分の状況を把握してもらえるため、オーバーワークにならないよう配慮してもらうことも期待できるといいます。
[Point!]
まわりに自分の状況を言語化して伝えるのが苦手な人にとって、この一覧表はとても便利。
チームで仕事をする場合には、仕事の進捗状況を周囲に対してこまめに知らせることが重要だといいます。(以上52ページより)
電話
ワークングメモリ(作業記憶)が弱い。
電話でたった今聞いた内容を忘れてしまったり、 記憶違いをしたりしてしまう。
[Hack!]
最後に、もう一回言ってもらおう!
話の最後に、「えーと、では○○の件について具体的にまとめますと…」と言いながら、もう一度相手に内容を言ってもらうように仕向けるといいそうです。
[Point!]
電話の最後にもういとど大事なことを言ってもらう方法としては、もうひとつ。
ストレートに「とても大事な件なので、確認のためもう一度お願いします」と言うのもアリ。
確実性が高くなるだけでなく、「話をよく聞いていますよ」と、真摯に仕事に取り組んでいる印象を与える効果もあるわけです。(以上58ページより)
人によって得て不得手は違いますし、誰でもミスはするもの。
だからこそ、本書に集められた多くのハックのなかから、きっと自分に合ったハックを見つけ出せるはずだと著者はいいます。
そして実践してみれば、日々にミスや困りごとが減り、できないことがある自分を責めたり、卑屈になってしまうことを防げるだろうとも。
「1項目=1ページ」の構成になっているため、気軽に読めるところも魅力。
発達障害に関する悩みを抱えている人は、日常をブラッシュアップするために参考にしてみるといいかもしれません。
Photo: 印南敦史
Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン