バグトリデザイン 村田智明著

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バグトリデザイン 事例で学ぶ「行為のデザイン」思考

『バグトリデザイン 事例で学ぶ「行為のデザイン」思考』

著者
村田智明 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784023318632
発売日
2020/02/20
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

バグトリデザイン 村田智明著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 書店では、本書はたぶんビジネス書のコーナーに置かれるだろう。なのに、ビジネスには全く無知な私がご紹介するのは、本書が教えてくれる「人の行為に注目してあるべきデザインを考える」という思考法が、日々の生活のなかでも充分に活用できるものである上に、とても面白いからだ。ここで言う「デザイン」は物の形・意匠だけではなく、その使われ方や、組織や社会のなかで機能するシステム全般を含んでいる。

 ユーザーがある道具やシステムに何かしら不便なものを感じたら、そこには不具合=バグがある。本書ではそれを「非効率」「迷い」「矛盾」「負環」(負のスパイラル)「心理」「誤認」の六つの種類に分けて解説している。たとえば「入店して尋ねないと場所がわからない駐車場」は非効率のバグだ。「分別・捨て方が自治体によって異なるごみ廃棄」は迷いのバグだし、「躓(つまず)く点字ブロック」は矛盾のバグ。負環のバグはちょっと難しく思えるが、たとえば「同時に使い切ることができないシャンプーとコンディショナー」がこれだ。いつもどっちかが残って、別のブランドに替えにくい。

 私がこれまでの人生でエレベーターのドアに挟まれたり、他人を挟んでしまって気まずい思いをしてきたのは、「間違えやすい開閉ボタン」という誤認のバグのせいだったんだ。このように思い当たることが次々と提示され、あれもこれも目からうろこ。ミステリーの謎解きを読んでいるみたいな爽快感を覚えるほどだ。

 最近、小学生の女の子が「からまないハンガー」を発明したことがニュースになった。家の人のお手伝いをしていて、洗濯物を干す細いハンガーがからんで不便だから、改善したいと思ったのだそうだ。見事なバグトリデザインの一例である。在宅ですごす時間の多いこの頃、本書を手にご家族で身の回りを点検し、バグトリにチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。

 ◇むらた・ちあき=工業デザイナー。近年はデザイン関係の啓発活動も行っている。神戸芸術工科大客員教授。

読売新聞
2020年5月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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