証言 沖縄スパイ戦史 三上智恵著

レビュー

4
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証言 沖縄スパイ戦史

『証言 沖縄スパイ戦史』

著者
三上 智恵 [著]
出版社
集英社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784087211115
発売日
2020/02/17
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

証言 沖縄スパイ戦史 三上智恵著

[レビュアー] 橋本倫史(ノンフィクションライター)

 昭和20年4月1日、沖縄島の西海岸に位置する読谷村から米軍が上陸した。75年前の今頃は、前田高地(ハクソー・リッジ)で激しい攻防戦が展開されていた。

 こう書き始めると、「また戦争の話か」と思う人もいるだろう。戦争をめぐる話は、イデオロギーに回収されがちだ。「沖縄スパイ戦」を指揮した陸軍中野学校に対する評価も、歴史家の間で議論が分かれるところだ。だが、論じるにはまず、体験者の言葉に耳を傾けなければならない。

 冒頭に、護郷隊として戦った元・少年兵の証言が収録されている。護郷隊とは、14歳から17歳の少年で編成された遊撃隊だ。護郷隊の中には最近まで戦争の記憶を語ろうとしなかった人が少なくない。話そうとしても「夢で見たこと言ってるんじゃないか」と言われ、近隣の人にも「兵隊幽霊」と遠ざけられてきた。だから語られてこなかったけれど、その記憶は「みんなみんな、ほんとうのこと」だ。

 本書には、数十年のときを経て語られる記憶が書き記されている。752ページという、新書とは思えぬ厚さにも、言葉の重さがにじんでいる。(集英社新書、1700円)

読売新聞
2020年5月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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