銀河の片隅で科学夜話 全卓樹著

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銀河の片隅で科学夜話 -物理学者が語る、すばらしく不思議で美しいこの世界の小さな驚異

『銀河の片隅で科学夜話 -物理学者が語る、すばらしく不思議で美しいこの世界の小さな驚異』

著者
全卓樹 [著]
出版社
朝日出版社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784255011677
発売日
2020/02/17
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

銀河の片隅で科学夜話 全卓樹著

[レビュアー] 仲野徹(生命科学者・大阪大教授)

 科学エッセイは売れないと出版社に言われた経験が冒頭いきなり書いてある。一瞬、読むのをやめようかと思った。いや、せっかくだから、ひとつくらいはと読んでみた。

 著者は物理学者だが、22の夜のために書かれた話は、美しい挿画付きで、天空、原子、数理社会、倫理、生命という5編にまとめられている。

 まずは生命編でお手並み拝見だ。最も専門に近い第18夜「分子生物学者、遺伝的真実に遭遇す」を読んでみた。正味4ページと、この本でいちばん短いエッセイである。

 細胞周期研究でノーベル賞を受賞したポール・ナースについて。「遺伝的真実」とあるから、てっきり研究の話かと思ったら、まったく違った。出生の秘密をめぐるちょっと哀(かな)しい話に心を奪われた。

 地球と月の重力がつりあうラグランジュ点。トリチェリ、ベクレルといった学者。多数決と付和雷同。トロッコ問題にサピア=ウォーフ仮説。話題は銀河的な広がりだ。

 この本、売れているという。科学エッセイでも売れるのだ。いや、これは「科学夜話」という新しいジャンルだから売れているに違いない。(朝日出版社、1600円)

読売新聞
2020年5月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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