『最強の睡眠』
- 著者
- 西川ユカコ [著]/坂木浩子(ぽるか) [イラスト]
- 出版社
- SBクリエイティブ
- ジャンル
- 社会科学/社会科学総記
- ISBN
- 9784815602673
- 発売日
- 2020/04/06
- 価格
- 1,650円(税込)
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眠れないときはどうすればいい? トライ&エラーで導き出した最強の快眠法
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『最強の睡眠』(西川ユカコ 著、SBクリエイティブ)の著者は、昭和西川株式会社 代表取締役副社長。
老舗寝具メーカーの創業家の出身だと聞くと、「恵まれた環境に育った人なのだろう」という印象を持ってしまうかもしれません。しかし実際には、決してそうではなかったようです。
会長である父親は、娘だからと行って手心を加えてくれるような甘い経営者ではなく、そもそも次女であったため最初から後継者として期待されていたわけでもなかったというのです。
それどころか、出版社の雑誌編集者を経て昭和西川の社員となったものの、大失敗をして精神的に追い詰められることになり、体も壊してしまったのだとか。
しかし、そんななかで唯一、夢中になれたのが睡眠に関する実践的研究だったといいます。
もともと寝具メーカーの社員として必要なレベルの知識は備えていたため、それを片っ端から検証していったそうなのです。
出合った全ての「快眠法」を試し、さらには「快眠できない」とされていることにもあえて挑戦してみました。
すると、効果があることとないことがわかり、まさに玉石混交の「玉」を拾えるようになりました。
そして、石を捨てて玉をくり返しているうちに、私の体調はすっかり上向き、精神的にも驚くほど強くなっていったのです。(「はじめに」より)
つまり本書では、そうしたトライ&エラーに基づき、最適な解決策としての「快眠法」を提案しているわけです。
きょうはそのなかから第5章「疲れを翌日に持ち越さない『夜時間』の過ごし方」に注目し、すぐに役立てることができそうな2つのポイントを抜き出してみたいと思います。
「すごく疲れた日」は、ためらわずに30分早く寝る
食事や入浴などを通じて睡眠の質を上げる努力を続けていたとしても、厳しいビジネスの現場にいると、ときには「ぐったり」してしまうこともあるものです。
すごく疲れてしまったときに大事なのは、そのまま引きずらず、“その日のうちに”リカバリーさせること。
「週末にゆっくりしよう」と考えたのでは、それまでの何日かのパフォーマンスが確実に落ちてしまうわけです。
だいいち、コンディションが悪いまま仕事に取り組んだとしても、うまくいくはずはありません。
だからこそ、がむしゃらに仕事を片づけようとするのではなく、まずはコンディションを戻すことに注力したほうがいい結果につながると著者はいうのです。
では、具体的にどんなリセットを図ればいいのでしょうか? 著者自身の例を参考にしてみましょう。
私の場合、とても疲れたと感じたときは、18時の終業と同時に急いで会社を出ます。そして、19時前に夕食を済ませてしまいます。とはいえ、家に帰ってから支度をするのでは間に合いませんから、途中で消化のいいそばを腹八分目に食べて帰ります。
家に着いたらバッグを置き、お風呂に直行して湯船にお湯を張ります。その後、服を着替えたり、翌日の準備をしている間にお湯が溜まったら38~40℃のお湯に10~15分浸かります。
そして、お風呂から出て1時間ほどのんびり過ごし、いつもより1~2時間早く寝てしまいます。 これえ、翌朝はかなり疲れもとれ、胃腸も軽く感じられます。 (207~208ページより)
これだけで翌朝はなかり疲れがとれ、胃腸も軽く感じられるのだといいます。
難しいことではないので、ちょっと調子がすぐれないと感じたら、参考にしてみるといいかもしれません。
忙しいときや、ストレスがたまっているときなどは、いつもと同じだけ眠ったとしても疲労が回復しにくいもの。
かといってギリギリまで寝ていれば、結果的に一日のサイクルが崩れていくことになります。
そのため、少しでも疲労や不調を自覚したら、いつもより30分でも早くベッドに入る習慣をつけ、自分自身で体調を立てなおすべきだと著者は主張しています。(207ページより)
ベッドに入っても眠れないときの「とっておきの方法」
いざ寝ようと思っても、なかなか寝つけないということは誰にでもあるはず。とくに不眠症の方は、「きょうこそは眠らなくては」と考えて自分を追い込んでしまいがちでもあります。
著者はそんな方に対し、「眠くなるまでベッドに行かないでください」と提案しています。
もし、眠くなったからベッドに行ったのに20分ほどしても眠くならない場合は、一度ベッドから出てしまいましょう。
寝入るまでに時間がかかると、気分的に焦ってさらに眠れなくなりますし、寝入るまでの時間がかかるほど、眠りが浅くなることがわかっているからです。(217ページより)
問題は、「ベッドから出てなにをするか」。
この問題については、眠れない日がしばしばある人は、普段から「眠れない日にやること」をリストアップしておき、いつでも実行できるようにしておくべきだと著者は主張しています。
そうしないと、ついスマホに手を出して余計に事態を深刻化させてしまうから。
ちなみにリストにあげるべきは、深く考えなくてもボーッとした状態でできること。
そして、時間があればやっておきたいけれど、わざわざそのために日中の仕事をさきたくないことがベストだといいます。
たとえば洗濯物をたたんだり、本を整理したりなどの単純作業は、力も必要ないのでおすすめだそう。
ただし、そのとき「あの本、どこに置いたっけ?」と電気をつけてガサガサ探したりすると、交感神経が刺激されてますます目が冴えてしまうので注意が必要。
そのため「眠れないとき」に備え、置き場所を決めておくといいそうです。
ところで、眠くないのにベッドに行くと、どんなことが起きるのでしょうか?
眠くなっていないのにベッドに入る→寝付けないと焦る→余計に寝付きが悪くなる→寝付けても、眠りが浅いという悪循環に陥ります。
ベッドに入ってから寝付くまでの時間が長いほど、眠りが浅くなるのです。(218ページより)
なお、連日にわたって寝つけない人の場合、「このベッドは眠れない場所だ」と脳にインプットされてしまっている可能性があるといいます。
そんなときは別の場所で寝たり、ベッドの場所を移動することで眠れるようになることがあるというので、記憶にとどめておくべきかもしれません。(216ページより)
睡眠の原理・原則じはもちろんのこと、朝の過ごし方、日中の過ごし方、今回一部をご紹介した夜時間の過ごし方、さらには環境づくりまで、さまざまなトピックスを網羅。
そんな本書を参考にすれば、「快眠」を実現できるかもしれません。
Photo: 印南敦史
Source: SBクリエイティブ