さらに不思議なイングリッシュネス ケイト・フォックス著
[レビュアー] 尾崎真理子(早稲田大学教授/読売新聞調査研究本部客員研究員)
イギリスはますます階級に敏感になったとM・サヴィジによる話題の調査報告『7つの階級』(東洋経済新報社)は伝えるが、一方こちらは階級の違いを超えて現代英国人が保持する独特の気質、ふるまい方を家や車、余暇まで様々な場面から分析した、社会人類学者による解説書だ。
<フランクで明快であること、自己主張をすることが生まれつきできず、常に遠回しで、常に複雑なわかりにくいゲームをしている>。そんな英国人社会では、お金儲(もう)けしても尊敬されないし、実務能力より卑下的、悲観的ユーモアに長じた人物が好まれ、なぜか出世するという。
行列もこの国らしさの最たるもので、一人でも整然と行列する英国人は、割り込まれてどんなに怒りで煮えたぎっていても、誰も文句は言い出さない。しかしレジが二つあれば少し離れて一列に並び、空いた方に先頭の人が進む。それが英国式フェアプレーの当たり前の光景だと、控えめな自負が説かれる。
全編、皮肉とユーモアの交錯した例証の行列。やっぱりイギリスは楽しいし手ごわい。北條文緒・香川由紀子訳。(みすず書房、3600円)