米中が牽引するITに日本の勝ち目はあるか

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米中が牽引するITに日本の勝ち目はあるか

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 我々の社会は、この半年足らずで一変してしまった。危機に陥る産業が多く出る一方で、テレワークやウーバーイーツなど、IT技術を活用した新たな動きも盛んになりつつある。

 そのIT技術の今後について知りたい方にお勧めしたいのが、山本康正『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』だ。山本氏は、米国の金融機関やグーグルでの勤務経験の後、現在は投資家及び京都大学特任准教授として活躍する。

 近年よく耳にする「AI」「5G」「クラウド」といったキーワードについて、その歴史も含めてわかりやすく解説されている。これら新技術により、「あらゆる企業がサービス業になる」「業界の壁が消える」「職種という概念がなくなる」などの変化が起こると著者は主張しているが、コロナ禍によって、この動きは加速する可能性がありそうだ。

 これらの変化を牽引するのは、GAFA、百度をはじめとした米中の巨大企業群だが、膨大な都市圏人口から得られるデータを活かせば、日本にも勝ち目はあるという。ただしそれには、新技術によるミスをある程度許容し、間違いがあれば補償あるいは修正すればよいという姿勢を持つべきだ、と著者は述べる。これこそが、ITの分野で日本が負け続けてきた、一番大きな理由かもしれない。

 一方、ITだけでは解決できない問題も、この状況の中で数多く見えてきている。このあたりを踏まえた続編も、ぜひ読んでみたい。

新潮社 週刊新潮
2020年5月21日夏端月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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