選考会で賛否両論を巻き起こした話題作! 日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作『暗黒残酷監獄』著者・城戸喜由さんインタビュー

インタビュー

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暗黒残酷監獄

『暗黒残酷監獄』

著者
城戸喜由 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334913366
発売日
2020/02/20
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

選考会で賛否両論を巻き起こした話題作! 日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作『暗黒残酷監獄』著者・城戸喜由さんインタビュー

[文] カドブン

日本ミステリー文学大賞新人賞で選考委員に賛否両論を巻き起こした本作。史上最年少で同賞を受賞してデビューを飾った話題の新人にお話を伺いました。

――初めて小説を書いたのはいつ頃でしょうか?

城戸:大学二年生の終わりですから、二〇一一年一月頃です。

――最初から本格ミステリを書いていたのでしょうか?

城戸:西尾維新さんの「化物語」シリーズが好きだったこともあり、最初はライトノベルを書いて賞に応募していたのですが、本格的に小説家を目指すうちに、好きな作品や書きたいものが変化していきました。純文学や社会派ミステリを経て、そのうちに本格ミステリを書くようになりました。受賞作以前に、全部で二十作以上は書いています。

――それまでの作品と受賞作とでは、何が違ったのでしょう?

城戸:前作で落選したときに、このままじゃダメだと思って、三つやり方を変えました。①アイデアを出し惜しみせず全部注ぎ込む、②自分が本当に読みたい物を書く、③人間を描く、の三点を意識しました。自分としては楽しんで書けたので、その意味での手ごたえはありました。

――本作の主人公・清家椿太郎のキャラクターは独特です。

城戸:最初はハートウォーミングな家族の物語にするつもりで、主人公も普通の倫理感を持つ人物だったのですが、自分が本当に読みたい物語を書こうと試行錯誤する中で、自分好みの異常な人物を主人公に据えて書いてみたらこれが思いのほか楽しく、突き進んでいったところ、椿太郎が出来上がりました。

――主人公と他者との会話が見事なまでに噛み合わないにも拘わらず、物語はテンポよく進みます。本作の構想のきっかけは?

城戸:最初はトリックからです。別作品で作ったトリックを気に入っていたので、それをアレンジするところから構想を開始し、そこに自分の書きたい人間像を肉付けしていきました。

――脇役にも個性があります。

城戸:たとえワンシーンしか登場しない人物であっても、何かしら心に残る台詞を言わせて、キャラクターに血が通うように心掛けました。

――一方で、姉を殺された主人公が事件を調査する際の、行動の描写などは非常に丁寧です。

城戸:これまでは物語のテンポを良くすることと、書き飛ばしてしまうことを区別できていなかったという反省がありました。リアリティを出すため細部のディテールを積み重ねることを意識しました。公共施設やイベントなど、実在のものを出しているのも同じ意図です。

――作品の舞台は東京の八王子市や都内各所です。土地勘があったのでしょうか?

城戸:実は八王子を訪れたことはなく、土地勘は全くありません。リアリティを出すために、徹底的に調べて書きました。

――独特のリズム感のある文体で、読むと癖になります。

城戸:自分としては無機質で無個性な文体を目指していたのですが、読んだ方の反応からすると、そうはなっていないようです。漫画でも、ストーリーは突飛で絵柄は普通の作品の方が、内容の個性がより目立つと思っていました。ただ本作は椿太郎による一人称の語り口なので、作者の文体そのものとも少し違うかもしれません。読者の評判が悪くないのであれば、これはこれで良かったのかなと思います。

――好きな作家・作品は?

城戸:本格ミステリの中では白井智之さんの作品が好きです。あとは……今村夏子さんが好きです。昔、少し純文学を書いてみて、自分には素養がないと思って諦めたのですが、純文学と呼ばれるジャンルには自分の好きな作品があります。佐藤正午さんなんかも好きです。実は本作は、『鳩の撃退法』に本格ミステリを加えるという裏コンセプトで書き始めました。

――文体面などで参考にした作家・作品はありますか?

城戸:昔一度、ダシール・ハメットの完全客観描写を真似しようと、描写だけで小説を書いてみたことがあって、その経験はもしかしたら生きているかもしれません。

――今後の執筆予定は?

城戸:次作も異常な人物の本格ミステリを書く予定です。現在プロットを作っているところです。本当にやりたいのは人間を一切描かず延々と多重解決を繰り返しながら、それでもリーダビリティが高い、というタイプの作品なのですが、現在の自分ではまだ力量が足りないので、しばらくは本作の方向性で書いていければと思っています。

取材・文:編集部

KADOKAWA カドブン
2020年5月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

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