<東北の本棚>地域再生への役割考察
[レビュアー] 河北新報
東日本大震災からの復興過程で、被災地では、ビジネスの手法を用いて地域・社会の課題を解決するアプローチ「ソーシャルビジネス・コミュニティービジネス」が数多く展開された。宮城県内の七つの事例について内容を紹介し、地域再生へ果たした役割を考察する。
震災後、被災地は急激な人口減少や農・漁業、観光業の衰退など多くの課題に直面した。登米市で2014年に始まった「東北風土マラソン&フェスティバル」は、課題解決に向けて震災ボランティアらが実行委員会を組織したイベントだ。
東北ゆかりの食と日本酒を集結したフェスを同時開催し、インバウンド(訪日外国人客)を集客する仕組みを工夫。多様な人々と連携して交流人口の拡大と地域経済の活性化を生み出し、19年の経済効果は推計3億円に上った。
石巻市北上町の一般社団法人「ウィーアーワン北上」は、人々が集う場や母親の居場所を取り戻すため、マーケットを開設。復興応援隊、住民の健康を支えるコミュニティーナース配置と事業を拡大、北上地区全体の再生に尽力してきた。
編著者の風見正三氏は宮城大副学長、佐々木秀之氏は同大事業構想学群准教授。18年に発行した書籍の続編にあたる。
創成社03(3868)3867=1760円。