もう一花二花咲かせたい50代の婚活物語――『結婚させる家』著者新刊エッセイ 桂望実

エッセイ

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結婚させる家

『結婚させる家』

著者
桂望実 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334913489
発売日
2020/05/21
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

もう一花二花咲かせたい50代の婚活物語

[レビュアー] 桂望実(作家)

 小説の着想はどこから?

 と、よく聞かれる。

 いつも「なんとなく、ふわっと浮かびました」と答えている。『結婚させる家』でも五十代の婚活を書いてみようと、ふわっと浮かんだ。

 私自身も五十代で同年代の友人らと会えば、大抵病気自慢になる。ここが悪い。あそこが痛いと報告し合い、あそこの病院ではこういう検査をしてくれる、などといった情報も披露し合う。お陰で素人の割に、病気の知識がそこそこ溜まっている世代なのである。

 いつのまにか世間では人生が百年になっているようで、そうすると五十代は折り返し地点にいることになる。これから先の五十年。気が遠くなるほど長いような、でもきっとあっという間なんだろうな、と思ったりする五十年だ。その五十年の間に体力はどんどん落ちていくだろうし、頭もいつまで働いてくれるかわからない。それはつまり五十代は、なにかするためのラストチャンスが、辛(かろ)うじて残っている世代なのかもしれないと考えた。

 そこでそんな人が、最後になににトライするだろうかと想像してみた。その時、独身であればこれから先の人生を共にするパートナーを、探そうとするのではないかと、ふわっと思い付いた。

「五十代」「婚活」と検索窓に入力したら、ずらっと結婚相談所の情報が出てきた。それらにアクセスしてみると、どうやら五十代の婚活市場は、活況を呈しているっぽかった。盛り上がっている雰囲気だったのだ。

 やっぱりそうかと心を強くして小説を書き始めた。登場人物たちに命を吹き込んだ後は、彼らの姿を追うのが私の役割になる。見失わないよう必死でついていく。そうして小説は完成した。同世代の彼らと一緒に過ごした時間は、とても楽しいものだった。

光文社 小説宝石
2020年6月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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